NPB審判部でクルーチーフを務めた佐々木昌信氏は、昨季限りでプロ野球の現場から退き、実家の覺應寺(群馬県館林市)を継いだ。今は住職のかたわら、東都大学リーグなどで審判を務めている。29年間、プロの投球を間近で見てきた元審判員に、“投球術”について語ってもらった。 取材・構成=依田真衣子 写真=BBM 間近でプロの投球を見られるのが球審だ
クセのない投手が強い
この「投球術を語る」という取材の依頼を受けて、私が最初に思い浮かんだのが、元
中日の
吉見一起でした。やはりコントロールが抜群。何よりも、「打者を打ち取る」ことに長けた投手でしたね。捕手も
谷繁元信でしたし、打者はいいようにゴロを打たされていたと思いますよ。審判目線で言うと、実はちょっとやりにくい投手(苦笑)。要するに、ストライクゾーンに出し入れする投手です。ただ、球審は迷ったときには「ストライク!」と手を挙げるのがセオリーなので、その際どい部分を攻めてくる、さじ加減のうまいバッテリーでしたね。当時はよく「このコンビは審判をうまいこと操作しているな」と思っていました。
ただ、吉見は150キロを超える剛速球を常時投げられるわけでもなければ、
ソフトバンクの
千賀滉大の“お化けフォーク”のような決め球があるわけでもありません。どうして打ち取れるのか。それはすべてのボールが一級品だからでしょう。決め球があれば、打者は「次はフォークかストレート」などとヤマを張ることができます。ですが、吉見の場合はどのボールも決め球になり得るので、選択肢が広がってしまうのだと思います。だから、打者は早いカウントから打ちにいきますよね。吉見が先発の日は、試合時間も非常に短かった印象があります。
球審というのは、主力級の投手であれば、投球モーションで球種を見抜けるようになるものです。必ずどこかにクセが出る。ですが・・・
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