73年ぶり史上2校目となる夏3連覇へ。田中将大を筆頭に前年Vメンバーも多く残り、全国4000以上の学校にターゲットとされた“王者・駒大苫小牧”だったが、夏の頂を目指した大航海は、前途多難の船出だった。優勝剝奪騒動に、不祥事による春のセンバツ辞退――。大うねりの中、逆境に立ち向かい続けたナインだったからこそ、あの夏、“激闘”を演じられたのもしれない。 文=楊順行 写真=BBM 
早実との決勝再試合は8回を終えて1対4。“王者・駒苫”が追い詰められたが、幾度も逆境を跳ね除けてきたチームが集大成の粘りを見せる
逆風の連続でスタート だから求めた“完璧”
気持ちいいくらい、思い切りバットを振った。そして空を切った。田中将大(現
楽天)。一塁側ベンチの仲間に、「ゴメン!」と笑顔を向けた。
2006年8月21日14時58分――。第88回全国高校野球選手権が終わった。
史上2度目、夏3連覇を狙う南北海道代表・駒大苫小牧と、夏はまだ優勝のない西東京代表・早実との決勝はまず、延長15回1対1の引き分け。37年ぶりの決勝再試合は、2点を追う“駒苫”が9回、中沢竜也の2ランで3対4と1点差に迫る。だが、二死から打席に入った田中が
斎藤佑樹(元
日本ハム)のストレートに三振を喫し、一歩届かず。2日がかりの名勝負が幕を閉じた。
「4対1のままで終わらず、4対3まで迫ったことに、あらためてこのチームのすごさを感じます」
香田誉士史監督の言う「すごさ」は、例えば、青森山田との3回戦。最大6点差を終盤に追いつき、ふたたび突き放された9回裏に、中沢の本塁打、そして三谷忠央の適時打でサヨナラ勝ち。
東洋大姫路(兵庫)にやはり4点リードされた準々決勝もそうだ。5回までわずか1安打ながら・・・
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