3期にわたって計17年間も指揮を執った原辰徳前監督のあとを受け、44歳の青年指揮官が誕生した。3年連続V逸、2年連続Bクラスからの浮上、覇権奪回を目指す中で、いかに伝統球団を立て直していくのか。ライバルである阪神への思いを含め、開幕へ向けた胸の内を聞く。
取材・構成=杉浦多夢　写真=桜井ひとし、早浪章弘、BBM

欠けたものを取り戻す

　監督への就任にあたり、「『強い巨人軍』『愛される巨人軍』をつくる」と誓いを口にした。「僕が変われば、選手が変わる。全員が変われば、優勝できる」。その決意は『新風』という今季のスローガンにも込められている。では、どう変わるのか。変えていくのか。新指揮官の目指す野球とはどんなものなのか。“常勝”を義務付けられるチームにおいてプレッシャーは計り知れない。それでも、自らがブレずに信念を貫き、今のジャイアンツに足りないものを補い、相手に「考えさせる」ことができれば、勝機は生まれる。

──監督という立場になり、気持ち的にもやるべきことも、キャンプからいろいろと変わったと思います。

阿部　キャンプを通して実感も湧いていったというところですね。ただキャンプでは訪れてくれる関係者の方が多くて、午前中はほぼあいさつで終わってしまうという日もありました。それにびっくりして(笑)。歴代の監督の方々もこういう大変な思いをしていたんだな、と思いながら過ごしていました。

──「変わる」というのは監督に就任するにあたってのキーワードでした。チームとして変化を感じる部分はありますか。

阿部　「ああしろ」「こうしろ」というのは一切、言ってないんでね。その中で選手たちが感じて動いてくれている。すごくベテランの選手たちの元気が良くて、それを見て若い選手たちも触発されて、とてもいい雰囲気でやっているなというのは感じます。

──「強い巨人軍」「愛される巨人軍」をつくるという言葉がありました。裏返すと、そうした部分が少しずつ欠けてしまっていたのでしょうか。

阿部　もちろん、みんな「勝ちたい」と思ってやっていたはずです。じゃあ、どうしたら勝てるのか。そこまで突き詰めて考えることができていなかったのかもしれない。それは反省点のひとつに入ってくる。そういう意味で、ああいう言葉を使わせていただいたんですけどね。

──阿部監督の考える「愛される巨人軍」とはどういうイメージですか。

阿部　勝ったときはいいんですよ。負けたゲームであっても、どうすればファンの方たちに最後まで球場に残って見ていただけるか。試合途中で帰っていく姿をいっぱい見てきたので。寂しいなと思いますし、そういう無様な試合をしているから、と責任を感じるときもありました。最後まで見届けていただけるチームにしたいなというのはありますね。

──やはり近年、チームとしての粘り強さが欠けていたのでしょうか。

阿部　だからこそ勝てなかったと思います。やっぱりチームが勝っていたときというのは、「終盤まで何が起こるか分からないよ」という雰囲気がありましたから。その差だと思います。

──2年前のキャンプでキャプテンだった坂本勇人選手が「若い選手が多くなったが年齢は関係ない。一人ひとりに勝ちへの執念が出てくれば、いいチームになる」と言っていました。

阿部　まさしくそのとおりだと思います。僕ら(首脳陣)がしゃかりきに言っても、やるのは選手ですし・・・