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VIVA! ホークス新時代

<LEGEND HISTORY>今につながる原点 受け継がれるべき『王イズム』とは

 

福岡に移転し、着実に積み上げてきたものがある。そして今また、一時代を築いたホークスの強さを取り戻さなければならない。小久保裕紀監督が目指す先に、チームとして欠かせないのが『王イズム』だ。当時、王貞治監督(現球団会長兼特別チームアドバイザー)は強い信念のもとで「強いチーム」をつくり上げた。その“原点”に立ち返ることが、真の強さの土台となる。
文=喜瀬雅則(スポーツライター)

王貞治監督の就任をきっかけに、チームは変革のときを迎えた


手本となるべき背中


 現球団会長の王貞治が、ソフトバンクの前身・ダイエーの監督に就任したのが1995年。現監督の小久保裕紀が、当時のドラフト制度における「逆指名」を経て、ダイエー2位指名を受けて入団したのは94年。師弟関係とも言える2人の歩みは、89年から福岡を本拠地としているホークスの歴史そのものと言っても、決して過言ではないだろう。そして、だからこそ、とも言えるのかもしれないが、小久保は監督就任時に『王イズムの継承』という一大テーマを掲げた。

「王監督は、主力が先頭に立ってチームを引っ張り、若い選手には『先輩の背中を見なさい』とおっしゃられてきた。王監督時代に築かれたイズムを継承しながら、今一度、チームに浸透させられるように努めていきたい」

 その施政方針には、王が『博多での30年』で築き上げてきた“強さの土壌”を、さらなる強固なものへと発展させていくという小久保の決意、さらには球団の総意が込められている。王が実践し、時代を超え、小久保が引き継ごうとしているこの『王イズム』の含意とは、それぞれの立場に課せられた“役割”をしっかりと認識することだと、読み解くことができる。

 実績、年齢、チームでの自らの立ち位置。そうしたあらゆる要素を踏まえて総合的に考えれば、おのおのが今、何をすべきか、必然的に見えてくる。小久保が現役時代、自らに課された“主力の役割”というものを意識し、自覚していた上で行動していたその一例として、王監督時代の高知キャンプで、連日のように繰り広げたその猛練習ぶりをプレーバックしてみたい。

 練習開始は午前10時。小久保はその2時間前に宿舎を出て、メイングラウンド横にあるウエート・トレーニング場にこもる。ストレッチをじっくりと行い、筋トレに取り組んだ後に全体練習に合流、ほかの選手たちと同じメニューのウォーミングアップをこなしていく。午後3時過ぎに全体練習が終わると、メイングラウンドには2つの打撃ケージが設置され、小久保と松中信彦の2人が競うかのごとく、それこそ連日のように特打ちを敢行。常にケージを独占し続けていた。

 打ち続けるその2人の姿を、ケージの後ろから、王が見つめる。その光景が醸し出す迫力もさることながら、その姿を横目に、若手選手たちが先に宿舎へ戻ることも、なかなかしづらい雰囲気が漂っている。

「練習しろ」と言うのではなく、小久保の背中から発信されるその“メッセージ”に、感化されないほうがむしろおかしい。「あの人たちが、あれだけやるのだから」という義務感から始まった練習であっても、日々の積み重ねを通して、次第にやるべきことも自分自身で見いだせるようになってくる。

 2003年の高知キャンプで・・・

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