奮闘を続けるリリーフ陣の先頭には、この変則サウスポーがいる。どんな場面でも動じることなく、難なく火消しもこなす。3年連続50試合以上登板の鉄腕は、キャリアを重ねる中で、自然とブルペンのまとめ役となっていった。 取材・構成=杉浦多夢 写真=兼村竜介、川口洋邦、BBM ※情報・成績は6月9日時点、年齢は2024年の満年齢 きっかけは満塁弾の被弾
ブルペンで強い存在感を放っている。イニングの頭からはもちろん、火消しの切り札としてフル回転。得点圏での被打率は驚異の.067、わずか1安打だ。その満塁弾を浴びた1安打が、進化のきっかけとなっていた。
「昨年はフィジカルの崩れが年間を通してあったんです。数字で言えば被本塁打が8月以降にちょっと多かった。そこをどうケアしていこうかと考えながら取り組んで、フィジカルとメカニックの部分をいろいろやりながらいい形のものがつくれたので、今のところはいい方向に進んでいるかなという感じです。
実は今まで野球をやってきて、クイックのフォームでしっくりくることがなかったんです。メカニックで『これだ』というのが見つからない状態でずっと投げていたんですよね。だからフィジカル依存というか、体の調子がいいときはいいけど、そうじゃないときは腕で頑張って投げるみたいな感じで。
それが今季、ファームで少し感覚が良くなってきて。一軍に上がって、ベイスターズとの試合(4月26日、横浜)で度会(
度会隆輝)君に(満塁)ホームランを打たれたんですけど、それがきっかけで良くなりました。スライダーを6球続けて、バーンって打たれて、あとから自分で振り返っているときに『こうしたらいいんじゃないか』というのに気づくことができた。ようやく自分の中でクイックのフォームが『見つかった』という感じです」
変則ゆえの悩みもある。自らの探求の先にしか、答えを見つけ出すことはできないからだ。
「僕のフォームは変則ですし、誰かにフォームを教わるということはほぼない。ランナーなしで普通に足を上げるときは『こういう感じかな』というのがあって、フィジカルが整っていればある程度のものが出せる状態だったんですけど、やっぱり立場的にランナーがいるときに投げることが多い。キャリア8年になりますが、自分の中で『これだ』というのは見つかっていない状態でずっと投げていた。それが見つかったことが、今季ここまでランナーがいてもあまり打たれていないことにつながっているんだと思います。
ただ被打率とか、数字はあんまり好きじゃない。ましてやまだ20試合くらいしか投げていないわけですから。40試合を超えてくれば数字のズレがなくなってくるんである程度は信用できる数字になるかもしれないですけど、30試合以下の段階で防御率とか被打率とかWHIPとか、変動する数字の話をしてもあまり意味がない。特にリリーフにとっては、たった1試合で走者を出して満塁ホームランを打たれたら、いい数字というのも一気に悪くなるわけですから」
正解を見つけ出すには日々の自省が欠かせない。その繰り返しの先にしか、たどり着けないものがある。
「度会君に打たれたときは・・・
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