今季のチームを語る上で投手陣の奮闘は欠かせない。言うまでもなくその先頭に立っているのは、投手リーダーにしてジャイアンツの新エース。自らの投球でチームに勢いをもたらしていく。 取材・構成=杉浦多夢 写真=BBM ※情報・成績は6月9日時点 ノーノーの理由
まさにエースの真骨頂だ。5月24日、甲子園での阪神戦で史上89人目、通算101度目となるノーヒットノーランを達成。巨人の投手が甲子園での阪神戦でノーノーを成し遂げたのは、1936年9月25日にプロ野球史上初のノーヒッターとなった沢村栄治以来88年ぶり。球団創設90周年のメモリアルイヤーにふさわしい、伝説の記憶を呼び起こす快投だった。 ──ノーヒットノーランから少し時間がたちましたが、あらためてどのように振り返りますか。
戸郷 なかなかできる記録じゃないので、それはすごくうれしかったですし、ああいう瞬間に立ち会える人もあまりいないと思うので。それを自分ができたというところもうれしいですね。僕の中でもプロ野球の世界に入ってからの目標でもありましたし、ひとつ階段を上ったというか、そんな感覚がありますね。
──自分の中で調子や感覚はどうだったのでしょうか。
戸郷 調子はすごく良かったです。出力も出ていましたし、変化球の精度、真っすぐの質というのはすごく良かったので。ノーヒットノーランができた秘訣かなと思いますね。左打者に対する外のスライダーがすごく良かったので、そこはひとつのバロメーターだったかなと思います。
──出力が出ていたということですが、今季の最速152キロを含めてストレートのアベレージも出ていました。
戸郷 はたから見ると球速というのは分かりやすいものですし、僕自身も最初のころはこだわりを持っていましたけど、勝つためには別にそこのこだわりはいらないなと思うようになっているので。今シーズに入ってからもそうですし、昨シーズンもあまり意識しながらやっている感覚はまったくなかったので。出たら出たで最高ですけど、出なかったからといって球速に固執することはないですね。
──やはり質がすべてだと。
戸郷 それまではあまりいい感覚がなかったというのもあるので、その部分で多少は良くなってきたかな、という試合でした。ただ、いいゲームが続かない。安定していたものが安定しなくなる、というのを最近はすごく感じるので。そこの再現性を高くするということを意識しながらやっていきたいですね。
──4回二死まで奪三振はゼロでした。調子がいい中で「丁寧に」という意識はあったのでしょうか。
戸郷 最初の6人がフライアウトだった時点で、「今日は三振が取れないのかな」と思いながら、もう三振は狙いにいかずに、切り替えて、打たせて取るようなピッチングで、というのは意識しました。
──実際に投球割合もスライダーとフォークが多くなっていました。今季は初コンビだった
岸田行倫捕手とのやり取りの中で、ということだったのでしょうか。
戸郷 そんなにすごく話をしたわけではなかったんですけど。僕は「ストレートが50%を超えて当たり前」だとずっと思っているタイプなんですけど・・・
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