広島・森下暢仁は明大から入団した2020年から5年、先発の軸で活躍している。佐伯鶴城高の150キロ右腕は、森下を大分商高時代に指導してきた渡邉正雄監督の下、英才プログラムを消化してきた。満を持して10月24日のドラフトを待つ。
取材・文=岡本朋祐　写真=BBM

マウンドからの景色

　甲子園を目指した今夏の大分大会は準々決勝敗退。高校野球は一区切りも、狩生聖真に心休まる時間はなかった。趣味は「野球をすること」。プロを目指す上で、リセットは必要なかった。高校卒業後も野球を続ける3年生は、一般的に2年生以下とは離れて汗を流すが、2022年から佐伯鶴城高を指揮する渡邉正雄監督は、それを許さない。狩生は言う。

「引退後、相手チームの了承を得た上で、練習試合に2試合登板しました。大学相手には先発して3回無失点。最速は147キロ。夏とは違う力のあるボールを投げることができ、手応えを感じました」

　高校生は伸び盛り。夏以降の過ごし方が、将来を左右すると言っていい。しかも、入学時から9cm身長が伸びて現在185cmだが、まだ成長しているという。「この前の練習試合も、マウンドからの景色が夏までとは、やや違ったんです」。体はデリケートで、アスリートであるならば、より神経を使わなければならない。3年間で投手として投げていく上で、柔軟性の大切さを学び「まだ、体が硬いので、風呂上がりにストレッチをしています」と、ケアにも細心の注意を払っている。

　9月中旬にプロ志望届の提出を予定し、渡邉監督は慎重を期していた。大分商高ではコーチ、監督時代を通じて西武・源田壮亮、広島・森下暢仁、ソフトバンク・川瀬晃ら7人のプロ野球選手(大学、社会人経由を含む)を育成してきた。佐伯鶴城高でも22年のドラフトで西武・古川雄大をNPBへ送り込んだ。短期間でこの数は、公立校では極めて珍しい。

2年間のクラス担任

　渡邉監督は夏以降も、プロ志望の3年生にはさらに、厳しい目を向ける。これは狩生に限ったことではなく、前任の大分商高、古川の際も同じスタンスである。

「夏休み、2学期に入ってからの過ごし方を見て・・・