日本一の歓喜に沸く中でも、選手たちはすでに次の戦いを見据えている。レギュラーシーズンでは、先発の軸として大車輪の活躍を見せた左腕。秋の短期決戦では、アクシデントに見舞われる中でも日本一への転換点となる投球を披露した。背景には今季得た自信と味方打線への絶対的信頼があった。チームの勝利に重きを置くエース。見えているのは、ただ一つの頂だ。 取材・構成=武石来人 写真=大賀章好、BBM 積んできた経験が円熟味を増した投球へとつながっている
心技体が支えに
エースの登板が日本一の行方に大きな影響を与えた。レギュラーシーズンから安定感抜群の投球を披露した左腕。心技体において進化を続けたことが、思わぬ事態にも動じず戦力的にも精神的にも柱となることにつながった。 ──個人としてはレギュラーシーズン最多の投球回を記録しました。
東 12球団で一番多くのイニングを投げることができたことは、自分にとってすごく自信になるものだったと思います。(1試合の)平均投球回にしても7を超えていたので、先発として十分役割を果たせたのかなとは思います。
──昨年から今季途中まで32試合続いたクオリティースタート(以下QS、6回以上投げて自責点3以下)が示すように安定感が光りました。自身ではその要因をどう感じていますか。
東 メンタリティーの部分じゃないですかね。どうしてもゼロに抑えようとして、ピンチを迎えると焦りが出てしまったりするんですけど、やっぱりウチの打線は点を取れる実力のある打線。僕が6回3失点以内で試合をつくれば、きっとそれ以上に点を取ってくれる、チームの勝ちにつながるというメンタルでやれていたからだと思います。
──投球の組み立てではスライダーの割合が少し増え、使い方にしても昨年まであまり見られなかった右打者の外角高めへのスライダーなど、選択肢が増えたことも要因の一つでしょうか。
東 そうですね。感覚的なものですけどカウントによって投げるスライダーを変えたというか、対戦している打者の反応を見ながら変わったところはありますね。
──今季はより対応力が増していた印象を受けます。
東 試合の中で成長していったというか。試合の中で次どうしたらいい、ああしたらいいと祐大(
山本祐大)と2人で話し合いながら取り組むことができたからだと思います。
──昨年の後半戦は気合で投げていたと話していましたが、今季の8月は負けなしの3勝で防御率も0.90。月間MVPも受賞されました。
東 今年も気合でしたね(笑)。
──その8月から、中5日での登板が4度。相当疲労もあったと思います。
東 8月、9月は特にシーズンの山がありましたから。4月、5月も含めてですけど、その山場をどう乗り切るかを考えながらやってこられたからこそ長いイニングを投げることができました。
──どんな心の準備をしていたのですか。
東 正直な話、シーズン開幕前は先発候補がかなり多い認識で、先発ローテーションを取れるかな、守れるかなという感覚でいました。ただ、気づいたら先発が足りないぐらいの状況に陥っていたので、責任というか、自分の仕事を全うしようという覚悟でした。
──確かに先発陣はシーズン中の離脱をはじめ、しっかりとハマった時期は多くありませんでした。調整の難しさもあったと思います。
東 そこは登板ごとの対応にはなりました。次が中5日ならリカバリーに専念、中7日の場合はもう一度トレーニングを入れてという調整をしていました。経験していなければ分からないことばかりだったと思うので、昨年の経験も今年に生きたかなと。
登板への逆算
──シーズン3位から臨んだCSファーストでは、走塁時に左太もも裏の肉離れを起こしました。その後も1イニング投げましたが、痛みはあったのですか・・・
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