「野球人生を懸けて」臨んだシーズンで見せたMVP、最多勝、勝率第一位を獲得する奮迅の活躍。だからこそ、再び夢へと挑戦することを決めた。“エースの魂”を、次世代へと託して――。背番号18が渡米前の11月下旬に語った自らの復活劇、MLBへの思い、そしてエース論をお届けする。 取材・構成=杉浦多夢 写真=兼村竜介、BBM ※年齢は2024年の満年齢 ※12月17日にオリオールズが契約に合意したと発表 復活劇の要因
鮮やかなV字回復だった。昨季は自己ワーストの4勝、キャリアで初めて100イニングに届かない屈辱。今季も先発ローテーションに滑り込んだものの六番手からのスタートだったが、復活の手応えはあった。充実したフィジカル、見直したフォーム、取り戻したストレートの威力、そして新たな決め球──。そこに黄金バッテリーの復活が加わり、見事な復活劇でチームをリーグVへと導いた。 ──今季はチームとしても個人としても素晴らしいシーズンだったと思います。
菅野 想像できなかったわけではないですけど、「よくできたな」と思えるシーズンでしたね。やっぱりキャンプの初日から、もっと言えば自主トレから状態は良かったですから。去年は開幕メンバーにも入ることができなくて、11年目で初めてでしたけど、その悔しさというのが今年は形になってよかったなと思います。
──昨年、さらに言えば過去3年の悔しさというのが根底にあったと。
菅野 そうですね。戦っていく中で、今まで抑えることができていたバッターに打たれたり、「こんなはずじゃないのにな」という思いが年々、小さかったものから大きく大きくなっていって。やっぱりそういった思いはありました。
──春季キャンプにかけて状態が良かったということですが、ベースにあるのはフィジカルだったのでしょうか。
菅野 フィジカルもそうですし、去年の途中から久保コーチ(
久保康生、巡回投手コーチ)とフォームをもう一度見直そうということでイチからやり直して。そういうものが形になっていったというのが一番だと思います。
──フォームを見直したことで軸となるストレートの威力を取り戻すことにつながっていったのでしょうか。
菅野 ストレートが良くなっていって、去年の後半にはもう155キロが出ていたので。そこで投げていくうちにだんだんスライダーも良くなっていきました。フォームとしては縦振りというか、上からたたくイメージで投げているので、その副産物として今季はフォークボールが一番良くなりましたね。
──追い込んでからの決め球としても、今季はフォークの割合が増えています。
菅野 フォークはもともと、あんまり得意じゃない球種なんですけど。以前は自分の中で「いかに回転を掛けないか」という考えでした。回転数が少ないほうが落ちる、そう思っている方も多いのかなと思います。だから深く握って、いかに回転を掛けないか、という考えだったんですけど、もう一度フォークが落ちる原理というのを勉強しようと思って。球団には優秀なアナリストの方もいますし、スコアラーの方とも話をして、「フォークボールというのは横の回転を掛ければ落ちるんだよ」ということをあらためて勉強したんです。ということは、横に回転を掛ければいい。人さし指だけを縫い目に掛けて、(横回転を)掛けるイメージで投げるようにしてからは、すごく落ちるようになりました。
──それは昨年のオフシーズンから取り組んできたものですか。
菅野 違います、違います。今年のシーズン中です。先ほども言ったように・・・
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