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2025ドラフト特集 逸材クローズアップ【超高校級158キロ右腕】

健大高崎高・石垣元気 エースの矜持を胸に「9回を投げ切るピッチャーが将来的にも活躍する選手だと思う」

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2025年に入り、次なるドラフト戦線が幕を開ける。そこで、今秋の指名の中心となるだろう4選手をクローズアップ。昨春、チームの躍進を支えたセンバツ優勝の立役者。150キロ台の直球をコンスタントに投げ込む剛腕エースは、勝利と「高卒ドライチ」に照準を定め、さらなる進化を期す。
取材・文=相原礼以奈 写真=桜井ひとし、田中慎一郎

試合を通して150キロ超を出せる直球、一級品のカットボールが武器。ほかの変化球にも磨きをかける


衝撃の158キロ 目標は「勝てる投手」


 気迫のこもったマウンドだった。昨年10月29日、神奈川県川崎市の等々力球場で行われた秋季関東大会の準々決勝・佐野日大高戦で、球場がどよめいた。2回二死三塁、フルカウントから石垣元気が投じた直球の球速表示は、『158キロ』。初回から150キロ台を連発していた中での衝撃の表示に、スタンドもベンチも沸いた。しかし、スピードガンが甘いと言われる同球場でもあり、投じた本人の感触は、それまでの自己最速と同じ153~4キロほど。「誤計測なので。あの球場が出やすかったんだと思う」。さらりと流して集中し続けた。その試合を7回3安打3失点で締め、10対3(7回コールド)で勝利してベスト4入り。3年連続となるセンバツ出場を当確させた。

 前の試合、1回戦の霞ケ浦高戦は同学年の下重賢慎、島田大翔、山田遼太の継投で9対0(7回コールド)で勝利。温存されて準々決勝を迎えた石垣は、「自分しかいないと思っていた」と強い思いで投げ抜いた。「全体的なボールの質などは、自分的には、夏のほうが良かった感覚がある。その中でしっかり抑えて、センバツに導くことができたのは良かった」と秋のマウンドを振り返る。

 高校入学時の球速は138キロ。中学時代からポテンシャルは持ちながら、特別目立つ存在ではなかった。同学年チームメートの左腕・佐藤龍月と切磋琢磨しながら順調な成長曲線を描き、1年秋から佐藤と左右の二枚看板を張った。2年春のセンバツでは全5試合45イニングを2人で投げ抜き、初優勝に導いている。

 佐藤は中学時代に侍ジャパンU-15代表を経験し、健大高崎高では1年秋から背番号『1』を着けて活躍。日ごろから技術面について聞き合い、刺激を受けてきた佐藤を、石垣は「自分が成長するのに必要な存在」と信頼する。得意の変化球を教え合うほか、佐藤の投球術と高い意識、石垣の直球の強さと、互いに、自分にない部分を学ぶことにもなった。生方啓介部長は「佐藤と出会っていなかったら、今の石垣はいないですね。お互いが、本当にいい関係で高め合えた」と評する。

 その佐藤が、2年夏の群馬大会で優勝して甲子園出場を決めた後、左肘じん帯損傷、疲労骨折のため戦線を離脱。8月末には左肘内側側副じん帯再建術(通称トミー・ジョン手術)を受けた。復帰までのリハビリに時間を要するとあり、石垣がエースとしてチームを引っ張る役割を担うことになった。青柳博文監督は「佐藤のケガによる離脱は、石垣の一つの転機になった」と証言する。

 石垣が初めて背番号『1』を着けて臨んだ昨夏の甲子園では、初戦の英明高(香川)戦に4回途中から登板し、5回2/3を投げ無安打無失点6奪三振。4回の救援時は満塁の窮地を切り抜け、1対0の勝利を引き寄せた。しかし、続く智弁学園高戦では1対2で惜敗し、チームが目標とした春夏連覇はならなかった。

 センバツの日本一、夏の甲子園での登板を経験し、石垣は自分の投球が通用するという手応えを得た。その中で、入学時から石垣の中にあったプロ野球への夢は、より解像度を増してきた。「センバツで優勝してから、プロ一本でいこうという気持ちになった。高卒で、ドライチで指名されて、家族に恩返ししたい。大谷翔平選手(ドジャース)みたいに、上の舞台で活躍できるようになりたいという思いも昔からある」。試合を通して150キロ超をたたき出す石垣の素質には、プロのスカウトも熱視線を注いでいる。

 最大の武器である球速については・・・

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