この男が打たなかったら仕方ない。2023年の日本一に導いた四番打者。阪神がもう一度覇権を奪うためには必要不可欠な右の大砲。FA宣言を経て、何が大切なのかを再認識できた。だからこそ、もう一度、あの頂を目指す。感謝を込めて。 取材・構成=椎屋博幸 写真=宮原和也 阪神残留の理由
入団8年目。昨年11月にFA宣言し、他球団への移籍も視野に入れていた。転機はファン感謝祭と選手会納会。支えられている人のためにもう一度。自らのバットで、2年ぶりの歓喜をつかみにいくため、キャンプを大切に過ごしている。 ──宜野座での大山選手の醸し出す雰囲気が、落ち着いているように感じます。
大山 まずは、練習でもメリハリをつけることを大事にしています。その中で、いい意味でも、キャンプ中は余裕ができているのかなと思います。
──オフはFA権を行使した上で阪神残留。その期間を経て現在、何かご自身の中で変わったと感じる部分はありますか。
大山 より強い覚悟ができました。本当に悩みに悩んで、最後は自分で決めたことでしたから。その分、プレッシャーを感じます。複数年契約を結んでいただきましたが、1年1年が勝負の覚悟でやっていますし、気が緩むことはないです。
──悩んだ時間をどのように受け止め、今にどうつながっていますか。
大山 プラスしかないですよ。悩めることはすごく良いことだと思います。FAを取得する権利を得て、僕のことを欲しいと言っていただける球団があり、話を聞かせていただける。プロ野球選手の全員ができる経験ではないですから。悩むことは、プラスになります。悩んだからこそ、周りの方から支えられていたんだ、とあらためて確認できましたので。
──オファーがあった球団から、大山選手の長所を伝えられたと思います。
大山 宣言したからこそ聞けたことは大きいですし、思ってもいなかったことも伝えられたので、それを意識しながら伸ばしていきたいです。また、宣言したことで、周りの方の大切さや大きさにも気が付きました。ファン感のとき、選手納会での裏方さんと話をしたとき、ファンと裏方さんの存在の大きさを感じました。
──そう思われるのは、大山選手の人柄や存在感もあると思います。
大山 いやあ、どうでしょうか(笑)。裏方さんと話をしていて、自分は大事なことを忘れていたんです。彼らが練習の準備をしてくれるから、何の不自由もなく練習に集中できていた。プロの年数を重ねるたびに当たり前のことだと感じて「そうじゃないぞ」と気づき、あらためて感謝の気持ちを持つようになりました。
──それが自分の力になっていきますね。
大山 一番大事なことを思い出させてくれたFA宣言でした。裏方さん、チームメート、そして・・・
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