それまで低迷していた横浜ベイスターズが上昇のきっかけをつかんだのは、2012年、DeNAが運営会社を取得し、球界に参入したことだろう。それから13年、チームは着実に力をつけ、観客動員も右肩上がり。そしてついに日本シリーズを制し日本一となった。特に近年はコーチ陣を日本球界の慣例とは異なる配置にするなど改革も進めてきた。そこにはどんな狙いがあったのか、チーム統括本部長の萩原龍大氏にチーム改革だけではなく、組織運営、編成のことなどについて話を聞いた。 取材・構成=早川大介 写真=BBM 
DeNA・萩原龍大チーム統括本部長
統括本部長の仕事
――まず、統括本部長という役職についてですが、どのような役割なのか説明していただけますでしょうか。
萩原 横浜DeNAベイスターズという会社全体で説明すると、トップに球団社長がいて、その下に何人かの取締役がいる中の一人として、いわゆる会社のマネジメントボードの一員となります。その中で、チームの管掌と業務執行の責任を負うのが私の立場です。
――いわゆる他球団の編成本部長とは、どこが違うのでしょうか。
萩原 球団によって役割が異なるため、一概には言えませんが、ベイスターズの場合、チーム統括本部の中に「編成部」「育成部」「ゲーム戦略部」という3つの部門があります。本部はコーチや戦うためのスタッフを含めた人員を集めたり、予算編成など全体を統括します。編成部は選手を集め、その集めた選手を育成するのが育成部。そして、育成された選手たちを活かして試合に勝つことに特化するのがゲーム戦略部です。私はこの3部門の全体の責任者を務めています。多くのファンの方は、「編成が人員を集め、監督が育成と戦略を担当する」と考えているかもしれませんが、当球団ではそのような形での役割分担をしていないのが特徴かもしれません。
――チームの戦力を整え、勝利に導くための部門のトップを務めているということですね。
萩原 そうですね。例えるなら、将軍や兵を集め、練兵し、勝利を目指すまでのプロセス全体を担うのがチーム統括本部です。現代社会に置き換えると、一般企業における「商品」が横浜DeNAベイスターズというチームになり、私たちはその「商品開発」を行っているイメージです。その商品を使ってマーケティングや営業をする「ビジネス部門」は、また別の部署になります。私自身は、「人」や「組織」を開発する仕事をしていると捉えています。
チーム改革の狙い
――2023年秋からコーチ陣の組織改革が始まりました。狙いはどこにあったのでしょうか。
萩原 シンプルに、基本に則った「普通に考えたらこうだよね」という体制にしたかったんです。野球はオフェンス(攻撃)とディフェンス(守備)でやることが違うので、コーチングスタッフも攻撃と守備で分けたほうがいいと考え、「オフェンスチーフ」と「ディフェンスチーフ」というコーチのポジションを新設しました。この新しい考え方が浸透するまでには時間がかかり、2024年のオールスター明けくらいまで噛み合う時間が必要でしたが、その後、徐々にうまく機能し始めています。さらに、昨秋は「勝つためのコーチ」と「選手を個として育成し、試合に準備させるコーチ」を分けました。チームはシーズン中、練習と試合を繰り返しますが、冷静に考えれば「試合で勝つ戦略を考えるコーチ」と「個々のスキルを伸ばすコーチ」では求められるスキルセットが異なります。そこで、これらの役割を明確に分けることにしました。現在、コーチ陣の役職名が多く、少し分かりにくいかもしれませんが、ゲームに勝つための戦略を練るコーチには「一軍」や「二軍」といった肩書きを付けています。例えば、一軍でオフェンス面の戦略を練るのが「一軍オフェンスコーチ」です。一方、選手を育成するコーチが「投手コーチ」「野手コーチ」で、その統括者が「投手コーディネーター」「野手コーディネーター」となります。
――ただ、野球は攻撃と守備に分かれていても、選手起用においては両者が密接に関わります。
萩原 そこを最終的にまとめるのが監督の役割です。監督はオフェンス側、ディフェンス側の意見をそれぞれ聞いた上で最終決定を下します。ただ・・・
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