
昨年の日本シリーズ第6戦、横浜スタジアムのスタンドに浮かび上がった人文字は、12球団共通の悲願だ[写真=川口洋邦]
連日連戦の約6カ月。ナイトゲームにデーゲーム、さらに敵地に移動しての試合あり。不規則な試合開始時間に空路・陸路の移動も伴う長丁場に身を置く選手の疲労度は、約3時間の試合だけでは計り知れない。
むろん、選手は承知のうえだ。連日連戦143試合のペナントレースを戦い抜くため、2月の春季キャンプで技術を向上させつつ体をつくり上げる。そんな中、シーズンの過酷さが伝わってくるのが、あえて万全の状態で練習を行わないことでもある。選手たちが異口同音に口にするのは、「疲労が残る中で、いかにベストパフォーマンスを出せるか」──。
コンディションを整えるのではなく、体の張りや痛みを想定しながら、万全ではないコンディションの中で汗を流すことも少なくない。ゆえに主力の故障や不振は付きもの。不測の事態をいかにカバーしていくかも、チーム力と、結束の強さが試される。
過酷な戦いに挑むチーム、そして選手とともに戦い、背中を押すのがファンだ。3月18、19日にMLB開幕戦が東京ドームで行われ、日本で“メジャー・リーグ熱”が増しているが、NPBも昨季セ・パ両リーグ計858試合に、過去最多となる延べ2668万1715人が球場に訪れた。2020年から新型コロナ禍で無観客での開催や入場制限を経て、23年から声出し応援が解禁され、“プロ野球熱”も活気に満ちている。
大声援を注ぐファンへ勝利を届けるため、選手は全力プレーを貫く。キャリアハイやタイトル奪取など、個の決意を胸に挑む新たなシーズンだが、根底の思いは共通だ。昨季、リーグ3位から日本一へと上り詰めた直後の
DeNA・
三浦大輔監督の言葉がすべてを物語る。
「1998年に優勝してから、なかなか勝てず。自分ももう一度という気持ちでしたが、現役では優勝できず、監督として本当に優勝できてうれしいです。苦しいときも、しんどいときも、常に信じて応援していただきありがとうございます。この日本シリーズ優勝を、皆さんと一緒に喜び合えたこと、最高の気持ちです」
リーグ連覇に挑むセの
巨人、パの
ソフトバンク、さらに27年ぶりのリーグ優勝を遂げ、連続日本一を期すDeNAだけではなく、他の9球団も目指すは頂点のみ。今秋、悲願を成就させるチームは果たして──。3月28日、新たなシーズンが幕を開ける。