昨季でリーグ連覇が3で途絶え、自身の成績も2ケタ勝利と規定投球回到達が3年連続でストップしたが、投球内容はスケールアップの一途をたどる。チームも自らも巻き返しのシーズンへ。開幕投手を託された男の思いは、志願して『13』から変更した背番号『18』に表れるが、心を突き動かすものは至ってシンプルだ。 取材・構成=鶴田成秀 写真=松村真行、BBM 欲を捨てた“勝負”
開幕が迫る中でも表情は柔らかく、野球を楽しむ心を忘れぬ左腕だが、発する言葉は力強い。自分本位な欲に興味を示さないのは、勝利を求めているからこそ。開幕直前の言葉にエースの自覚がにじむ。 ──開幕となれば無意識のうちに気持ちが高ぶることもあると思いますが、心の調整で意識していることはありますか。
宮城 う~ん、どうだろう……。何かあるのかな。いや、特に意識してやっていることはないですね。毎試合、変わらないし、変えずに。自然と高ぶってしまっても、それはそれで良いというか。そこで意識して何かを変えると、いつもどおりではなくなってしまうので。
──それは、初めて開幕投手を務めた昨季の経験もあってのこと?
宮城 いや、昨年も同じ思いでした。登板日(開幕)が近づいてくると、緊張感は出てきましたけど、「やってやるぞ!」と気合が入り過ぎることもなくて。うまく伝わるか分からないんですけど、“開幕”だからではなくて“勝ちたい”思い。だから緊張感は出てくるけど、気合は入り過ぎなかったんだと思います。
──過去には「シーズン1球目はストレート」と決める投手もいたものですが。
宮城 僕はまったく決めてないですし、シーズンの1球目に特別な感情もないんです。そこにこだわるのは、ピッチャーの欲でしかないのかなって。
──欲、ですか。
宮城 ピッチャーがボールを投げて試合が始まる。そのボールを磨くために練習をしています。だから、1球目に特別な感情を持つことは悪いことではないと思うんです。でも、もっと考えれば、ボールを投げるのはバッターを打ち取るため。アウトを重ねて、得点を与えず、チームが勝つため。だから、誰が一番(打者)で打席に立つか分からないのに球種を決められない。どの球種が得意なのか、初球から振ってくるのか、引っ張りか(コースに)合わせるタイプなのか、どんな傾向のバッターかも分からないので、やっぱり決められないんですよね。
──開幕ではなく、“勝負”への思いが伝わってきます。
宮城 真剣勝負ですから。僕にとっての1球目は、相手にとっての1球目でもある。だから必死に打ちに来る。やっぱり真剣に考えますよね。
──注目度が高いだけに、見る側は開幕戦を特別視するものです。
宮城 だからだと思うんですけど、やっぱり・・・
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