チーム改革のために球団フロントが着手したのが“外部の血”の導入だった。新たに5人のコーチを招へい。そのうち4人はライオンズのユニフォームを着たことがなかった。なかでも得点力向上を成し遂げるために期待がかかるのが鳥越裕介ヘッドコーチと仁志敏久野手チーフ兼打撃コーチだ。確かな指導実績を持つ2人が開幕に向けて手応えを語り合った。 取材・構成=中島大輔 写真=兼村竜介、川口洋邦 
鳥越裕介ヘッドコーチ[左]と仁志敏久野手チーフ兼打撃コーチ
強いチームとは何か
――昨季終了後、2人はコーチに就任。秋季練習からオープン戦まで指導して、チームが変わってきた感覚はありますか。
鳥越 少しだけですかね。変わっているかもしれないけど、まだまだですよ。
仁志 現時点では特にチーム内に問題があるという状況ではありません。開幕して戦ってみないと……というところです。
――
源田壮亮選手は「すごく変わってきている感覚がある」と発言していました。2人はどんな内容を選手に指摘することが多いですか。
鳥越 僕らは全然言っていることが違うと思います(笑)。自分自身は大した選手ではなかったので、今まで見てきた成績を残した選手とか、強いチームとはどういうものかを伝えています。
仁志 僕は立場的に技術的な話が多くなります。「野手チーフ」という肩書きをつけてもらっているので、鳥越ヘッドが厳しく選手たちに言っていることを、自発的にやってくれるようになればいいなという声掛けはしますね。
――先ほど「成績を残した選手、強いチームとはどういうものか」という話がありました。具体的には?
鳥越 例えば、取れるアウトを確実に取る。ミスはどうしても出るけど、それを起こさない。100%を求めていくためには何が大事なのかを紐解いていくと、朝起きたときから準備は始まっています。パフォーマンスを発揮するため、技術を上げるためなど、いろいろな準備がありますが一流の選手は一切手を抜かない。そうするのは結構きついんですよね。自分に厳しくないとできないので。
仁志 そうだね。
鳥越 仁志コーチは自らを厳しく律してきた人。僕は妥協してきたタイプなので、分かるんですよ。僕のほうが体は大きいけど、実績を考えると仁志コーチに勝てない。それは仁志コーチが常に野球を一番に考えてやってきたから。そういう人たちが一流なんです。
仁志 プロ野球選手になっている人たちはみんな可能性を持っています。それを開花させるためには、いかに自分自身に興味を持つかが大事。それによって自分の内面や技術にストイックになっていく。それは他人から言われて分かるものではない。感じてもらうしかありません。直接そういう声掛けはしませんが、何となくそういうことを考えるように前向きな話をしているつもりです。
鳥越 特に今の選手は自分で自身の可能性を線引きします。「自分はこんなもんだ」という感じが見えるときがある。「もう無理」と言う人が多いけど、そう言った時点で可能性が消えてしまう。でも、自分の可能性をつぶしてほしくない。例えば僕がドラゴンズに入団したときに10年後、守りでメシを食っていくと思った人は誰もいないはずです。それくらい自分の可能性は分からないので、つぶさないようなアプローチをします。無理なことですけど、プロ野球選手になったからには全員に幸せになってほしいので。
仁志 僕は侍ジャパンU-12の監督を務めていましたけど、今の若い子たちは周りからはぐれることを嫌う傾向にあります。周りの目を気にせず一人で練習する選手であれば、能力が少々低くても、野球選手としてそれなりのところにたどり着けると思うんですよ。選手がもともと持っている能力を最大限に引き出せるかどうか、僕らは可能性を見つけながらアプローチする立場です。ただ、やっぱり最後の最後は自分で自分の力を引き出さないといけないので。
――鳥越ヘッドが妥協してきたタイプの選手だったというのは意外です。
鳥越 厳しくしていなかったわけではないですよ。ドラゴンズの環境は厳しかったので。ただ・・・
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