パンチ力がある左のスラッガー&外野手であり、最速151キロを誇る本格派右腕でもある。肩の強さから投手を兼任し始めたのは1年秋からだが、無限の可能性を秘めた頼もしき主将だ。 取材・文=沢井史 写真=牛島寿人 
打者として入学したが、投手のやり甲斐も感じるように。プロ注目の二刀流だ
秘めたポテンシャル
2023年夏の兵庫大会。3回戦で同夏の優勝候補・報徳学園高と対戦したのがノーシード・滝川高だった。当時1年生だった
新井瑛太が三番・右翼で先発出場。2対11と大量リードを許した6回表、反撃ののろしを上げる中前打を放ち、3点をかえした(5対11で敗退)。新井は2試合で10打数5安打を記録。シュアなスイングに俊足を生かした守備力は評判を呼んだ。2年生に進級した直後の昨春、あるNPBスカウトから「滝川高の新2年生・新井が、ブルペンで150キロを出したらしい」との情報を耳にした。
投手は未経験だった。持ち前の強肩と身体能力の高さに可能性を感じた近藤洋輔監督が、投手転向を勧めたのである。初めてのマウンドにも戸惑うことなく「野球で一番目立つポジション。むしろやってみたかった」と意欲的に練習に取り組み、投手を始めてわずか数カ月で秘めたるポテンシャルを発揮したのだ。
勝負の世界は厳しい。昨春の県大会は地区大会で敗退。ノーシードで迎えた昨夏の兵庫大会では優勝候補の一角だった神戸国際大付高と2回戦で激突。新井は先発マウンドを任されるも、7回8安打5失点で降板し、4対6で敗退した。
「スライダーが決まらなくて、ストレートでストライクを取りに行ったところを打たれてしまいました」
秋の県大会でも神戸第一高との初戦で先発するも、立ち上がりから制球が定まらず、7回5失点で降板。試合は延長11回までもつれるも、5対6で敗退した。またもチームを勝利に導くことはできなかった。課題は明確だった。秋の試合では7回で8四死球。夏も7回で5四死球を与えている。近藤監督は言う。
「スピードは出ても、やはり制球力ですね。下半身がまだまだ弱かったです。練習試合では好投するのですが、公式戦になると、どうも力んで制球が乱れてしまう。まずは下半身を強くすることを課題にして、この冬が勝負だと言いながらトレーニングをしました」
新井本人も同じ思いだった。12月に入ると、毎週日曜日は学校から数キロ離れた須磨海岸の砂浜でのランニングを敢行。砂浜は足元が不安定なため、真っすぐに走るには下半身の粘りが必要だ。
「
メインはダッシュ、サーキットメニューです。50分間走と言って、言葉どおり50分間ずっと走るメニューもありました。1年生のときもやっていましたが、この冬のほうがキツかったです」
ボールは一切握らず、下半身の柔軟性を意識したトレーニングも含め、冬場は体づくりに集中した。さらに・・・
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