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ダルビッシュ有特集 野球界発展へ道標を示すレジェンド

<独占特別インタビュー>パドレス・ダルビッシュ有 未来へ──可能性は無限大 日本野球の発展を目指し「(アメリカの)科学ベースと、(日本の)コーチングとが融合すれば、一番伸びる環境になる」

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2023年に開催された第5回WBC。日本代表に招集されたダルビッシュ有のチームに対する献身的な働き、日本野球発展のために、自分の持っているものを伝えようとする姿勢がファンに大きな感動を与えた。スーパースターでありながら、目線はいつも野球界の発展に据えられている。そして今回、その日本野球への思い、さらには父親としての在り方、野球への衰えぬ探求心などについて語ってもらった。
取材・構成=椎屋博幸 写真=Getty Images

3月のスプリングトレーニングのときに約40分に及ぶロングインタビューで、日本野球の未来、自身の現在地、そして父親として、さまざまなことを語った


<第一章>日本野球への期待感 お互いを高め合う必要性

 WBC日本代表で見せたダルビッシュ有がチームを、そして日本を思う心。日本野球への期待感や、希望というものが、右腕がメディアと通じて語る言葉の中に、読み取ることができる。未来の日本野球に対する思い。そして、大好きな野球が日本でどうすればより発展するのか? 海の向こうで奮闘して、日米の良否が分かるからこそ語ることができる未来への可能性とは――。

まずは自分のことに集中


 これからの時代、ますますアメリカの大学に野球をやりに来る学生が増えていくと思います。そうなると日本の野球界は変わってくると思いますし、楽しみではあります。僕は現役選手なので、まずは日々レベルアップするっていうことだけしか考えられず、それで精いっぱい。現在は、日本にいる後輩たちなどともやり取りして、お互いのスキルをアップデートしていきたいということは考えています。何か将来の野球選手のためにというところまで、今の僕にはキャパシティーがない。これが本音です。

 一方で、教えられる範囲で、伝えられるのであれば、という考え方は持っています。周りとコミュニケーションを取ることが好きですし、若い選手に聞いたり、話をしている中で、本当に自分にない感覚を持っている選手がいっぱいいる。その話を聞いて、今日の自分、明日の自分をより良くしていく方向に使わせてもらっているという感覚しかないです。

 僕自身、昔からお互いを高め合いたい、と思っているだけ。ベースボール・マガジン社さんで『変化球バイブル』を出していただきましたが、一部の球団の人に怒られ、先輩方にも……。そういう時代だった。僕が入団したときも、周りの方々は握りなど全然教えてくれなかった。でも絶対に教えてもらうほうがプラスになるじゃないですか。だから後輩には何か助けてあげられたらいいな、と思っていたんです。そこから時代は流れて、僕自身がこうあってほしいなという未来になりつつあるので、本当にうれしいですね。それと、間接的にですが、僕の『変化球バイブル』を見て、実践した選手がプロ野球選手になっているということを聞くとうれしいです。

<第二章>日本野球の未来への希望 科学的根拠と経験の融合

日本式の教えも大事


 プロ野球界で成功してきた方々というのは、自分のやり方を独自に見つけて成功してきたわけです。そのやり方が全員に当てはまるかと言ったら、そうじゃない。僕も自分の感覚に対し試行錯誤を繰り返しています。現在のピッチングで大事にしていることを簡潔に言うと、右足の股関節を引き込んでいかに脛(すね)を前に倒せるかということを意識しています。うまく倒せたら、勝手に体がホーム側へ向かう並進運動になり、それが球速アップへとつながります。その倒すスピードに合わせてリリースをすると、あまり力を使わなくてもスピードが出やすくなる。

 しかし、この投げ方が全員に当てはまるかと言うと、そうではない。そういう考えがあるので、人に投球フォームのことを聞かれても、あまり積極的にアドバイスはしないです。その投手自体の感覚や考えも違えば、体格も違う。もっと言うと、人生経験も違いますし、脳の形も違います。アメリカでは・・・

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