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甲子園特集 2020年夏の記憶

<2020年夏に感じたこと>元帝京高監督・前田三夫に聞く「緊迫した真剣勝負を見せようと。素晴らしい試合ができたことがうれしかった」

 

50年に及ぶ高校野球指導歴において放課後、グラウンドに立てない経験は初めてだった。3度の甲子園全国制覇へと導いた名将の目にコロナ禍の夏はどのように映ったのか――。
文=楊順行 写真=BBM

2020年夏の東東京独自大会では東亜学園との準決勝で8回に逆転して勝利、関東第一との決勝でも延長11回にサヨナラ勝利と、劇的な優勝を飾った


選手全員に電話をかけ気持ちを確認


 部員全員に電話をかけたという。

「ある人からは、『ライン動画で話をしたらどうでしょう』と言われましたが、待てよ、と。こちらから話をする一方通行だけではなく、少しでも彼らの反応を直接感じたかった」

 2020年5月20日。コロナ禍によりセンバツ、春季大会に続いて夏の地方大会、そして甲子園の中止が決まったあとだ。予測はしていた。なにしろ、生命さえ脅かしかねないウイルスのまん延である。帝京の前監督・前田三夫さんは振り返る。

「2月末から学校は休校、さまざまなスポーツイベントの中止ばかりか、社会全体が厳戒態勢です。非常事態宣言が出るなか、高校野球だけ例外、というわけにはいかないでしょう」

 ただ、ことに3年生に対して話すときには胸がふさがった。下級生にはまだ甲子園に行くチャンスがあるが、彼らは最後の夏さえも奪われたのだ。言葉を探した。両親や、ここまで応援してくれた人たちに感謝しよう。夢を持って野球を続けよう。前田さんが気にかけたのは、選手たちの気持ちが切れることだったが・・・

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