代名詞の“フルスイング”は、決して本塁打を狙うための大振りではない。溜めた力をボールに伝え切ることで安打を量産してきたスペシャリストが独自の「打率3割論」をさまざまな角度から斬り込んだ。 取材・構成=中野聖己 写真=BBM 
日本ハム、巨人時代を合わせて10度3割をマーク。2006、07年には両チームを優勝に導き、野手では史上初の両リーグMVPに輝いた
打率と本塁打の関係性
3割30本塁打9回は、王貞治氏(元巨人)の13回に次ぐ歴代2位の偉大な記録だ。昨今の「フライボール革命」(ゴロではなく、ボールに角度を付けて打ち上げることを推奨する打撃理論。野球界で浸透してきた「レベルスイング」と相対する)の影響も、打率低下の要因の一つという見方もあるなかで、本塁打を30本以上打ちながら3割超えの高打率を残した小笠原氏は、打率と本塁打の関係性をどうとらえているのか。 僕は根本的に、ホームランバッターではないんですよ。プロ野球界で体は大きいほうではなく平均以下。最初のキャンプで打球が内野の芝生を越えず、全身を使ってバットを振り切った力をボールに伝えようと取り組んだのが原点。しっかりとスイングして、ボールをとらえる確率が上がれば、自然に距離が伸びたという結果なんです。ただ、本塁打は狙わないと入らない部分もあります。落合(
落合博満、元
ロッテほか)さんのように「ホームランの打ち損じがヒット」という考え方もありますね。
入団会見で「首位打者を獲れるようなバッターなりたい」と言ったように基本的には安打。三番を打つようになって立場が変わりホームランも出るようになりましたが、30本がノルマでその先は見ていませんでした。「3割30本90打点」のラインは常に意識していましたね。
昨今の「フライボール革命」がいけないわけではありません。ただ全員が全員右へならえで自分の良さを消してしまっている面はあるかもしれない。自分の体を知らずに間違ったバッティングをしようとしているから難しい。ボールの軌道や変化への対応力ではなく、スイングの形ばかり追い求めようとしている。体の動き方、骨格や関節は人それぞれ違うので、自分の体を正しく把握してスイングすること。インパクトのバットコントロール、タイミングの取り方などオリジナリティーのあるスタイルを確立することは、いつの時代でも最も必要だと思います。
今、パ・リーグで3割を打っている
楽天の村林(
村林一輝)はシンプルなバッティングをしています。コンパクトに、肩も腰も膝も基本平行。平行に体を回して、打ったあとも平行になっている。どんな球にも対応しやすいスイングの入りとフィニッシュですね。
ソフトバンクの柳町(
柳町達)も同じタイプ。
オリックスの太田(
太田椋)は多少、独特な形でバットのヘッドを下げながら体の内側から出すイメージで対応している。いかに再現性を高め・・・
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