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週刊ベースボール4000号プロジェクト

<創刊4000号記念COLUMN>野球から得る人生訓「その人の前で言えないようなことは、書いてはいけない」(週刊ベースボール 編集長・岡本朋祐)

 

巨人長嶋茂雄監督は第2期監督時代、2001年に勇退した。記者会見で「野球とは?」と聞かれ「野球というものは、人生そのものだ」と語っている[写真=BBM]


 取材の本質とは。創刊4000号の節目、雑誌編集者として、あらためて考えてみた。企画を考え、誌面に落とし込む素材を集めるべく、人に話を聞き、物事を調べることである。

 雑誌はページをマネジメントする編集者、原稿を執筆する筆者、写真を撮影するカメラマン、レイアウトするデザイナー、印刷所、取次など多くの段階を経て発刊される。編集者は各方面とのコミュニケーションを取り、その一つが欠けても雑誌は「形」にはならない。そして、言うまでもなく、ご購読いただく読者の皆さまに支えられてきた。67年のご愛顧に、深く感謝申し上げます。

 誌面編集の大前提として、正確な情報を収集するためには、取材対象者の対応なくして、何も生み出されない。1958年の創刊から4000という数字を刻めたのも、各球界関係者等の協力があってこそであり、この場を借りて、重ねて感謝いたします。

 さて「取材」に際して駆け出しのころ、某通信社に勤務する先輩記者から現場で指導されたことがある。「取材とは、その対象者と1対1で膝を付き合わせて、談話を取ることから始まる」。報道各社が集う記者会見、試合後の囲み取材などは一般的に大衆に向けて発信する場であり、あくまでも「共有物」。横並びとなる。受け答えする側も、公衆の面前でのコメントは「模範解答」に徹するケースもある。限られた取材環境下で、記事化するスキルも磨かなくてはいけない。独自性を出すためには、個別で事実を確認する意識が求められる。また、あらためて時間を割いてもらう個別インタビューが、貴重な場となるわけだ。そこに至るまでには、信頼関係を築く必要がある。現場からの信用を得るためには、長い時間を要するが、失うのは一瞬。歴代の編集者が積み上げた67年があるからこそ、現在があると、真摯に受け止めなければならないと思っている。

 週刊ベースボールは巨人・長嶋茂雄がプロ野球デビューした1958年に創刊した。国民的娯楽へと押し上げた「ミスタープロ野球」とともに歩んできたことになる。第二次政権における2001年9月28日の勇退会見の際、長嶋監督は「野球というものは、人生そのものだ」と、名言を残した。

 何を訴えたかったのか。野球からは人生訓、学びが得られるということだ。今年6月26日に野球の振興・普及を目的とした「球心会」の設立会見で王貞治代表は「6月初めに長嶋さんが亡くなりまして、大変、野球界が騒々しかったんですけど、それだけ長嶋さんの存在が大きかった。と同時に、野球に対する思いを皆さんお持ちになっているということを、再認識させていただきました。野球に対する思いというのは、歳を取っても、年々強くなっている」と語った。5月20日で85歳になってもなお、野球への情熱は不変なのである。

 全日本野球協会・山中正竹会長は5期目に再任した6月18日、こう決意を述べた。「年齢を聞かれれば『まだ、78歳』と答えます。嫌な顔をされますが(苦笑)。まだ、野球を学び続けていきたい。絶えず野球は、我々に課題を与えてくれるんです。人生を教えてくれるのが、野球です。次から次へと考えることが出てくる」。プロ・アマにおける球界トップの言葉を、重く受け止めた。雑誌編集者に置き換えれば常に現場主義、最前線で汗をかき続けるということだ。

 この秋、取材の本質を再認識する場があった。東京六大学結成100周年のレジェンド始球式に、ジャーナリストの東大OB・大越健介氏が登場。週刊ベースボールではNHK時代の2011年に約1年間、連載コラム「Baseball Watch」を掲載した。六大学通算8勝。思い出が詰まった神宮球場で投じた後、野球が卒業後の人生にどうつながっているかを語った。

「神宮のマウンドに立てたこと、この素晴らしい時間と空間を独り占めにできた経験が、自信になりました。今の仕事で難しいインタビュー相手とか、つらい場面で話を聞かないといけなかったりしますけど、1対1で誠意を持って向き合えば、野球だったら打ち取れるし、私の今の仕事、インタビューだとすれば、相手の心の扉を少しでも開くことができる」

 言うまでもなく昨今はインターネット社会で、SNS等でさまざまな情報が氾濫している。スマホ一つでニュース、知りたい事柄を引っ張り出せるが、何が正しく、間違いであるか、見極める目が大事になる。

 週刊ベースボールでは誌面のほか、WEBも展開しているが、野球を通じて信頼できる、正しい情報を読者の皆さまに伝えることを使命としてきた。取材の本質を突き詰め、微力ながら、野球専門誌として、ニーズに合った誌面をお届けする。「その人の前で言えないようなことは、書いてはいけない」。来年、創業80年を迎える小社の社是を、あらためて肝に銘じて仕事に当たっていきたい。(文=岡本朋祐[本誌編集長])
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