プロ入り19年目のシーズンに大きな節目に到達した。野茂英雄、黒田博樹、ダルビッシュ有に続く、史上4人目となる日米通算200勝を達成。栄光と挫折に彩られた現役レジェンドのキャリアにおいて、「記録」が持つ意味とは果たして何なのか。 取材・構成=杉浦多夢 写真=桜井ひとし、BBM、Getty Images 「200」の重圧
長く苦しい道程だった。楽天時代の2013年シーズンには「24勝0敗」という驚異的なレコードを打ち立て、MLBでは名門ヤンキースのエース格として腕を振った現役レジェンドは昨季、楽天でキャリア初の未勝利に終わると、新天地を求めることを決意。残り「3勝」となっていた日米通算200勝の金字塔を通過点とすべく今季に臨んだものの、順風満帆とはいかず苦悩の日々が続いた。それでもシーズン最終登板となった9月30日の東京ドームでの中日戦、6回2失点の好投で今季3勝目を挙げてついに大きな勲章を手にすると、マウンド上での鋭い眼光とは打って変わり、表情を緩めて「感無量」と笑みを浮かべた。 ──シーズンが終わってから時間が経ちましたが、日米通算200勝を達成したオフの心境というのはいかがですか。
田中 特別なことが言えるわけではないんですけど、本当にシンプルに、達成できてよかったなという気持ちですね。自分の中でずっと「そこがゴールではない」と思ってやってきましたけど、ケガがあったり、思うように勝ち星を挙げることができない期間が、何年にもわたってすごく長かったので。そういう部分で、今年の最後の登板で届くことができて本当によかったなという感じです。ポンポンと達成できてしまうよりは、少し重みが違うのかなと思います。
──通過点ではありながら、ホッとした気持ちもどこかにあると。
田中 ホッとはしましたよ。やっぱり常にマスコミの方からもコメントを求められますし、(200勝に関する)質問に答えることを何年にもわたってずっと言葉にしてきたので。自分の中でも、いつまでも達成できない不甲斐なさがありましたね。毎回毎回、同じようなことを言わなければならない状況に対して、自分自身にフラストレーションがたまっていましたし、毎回毎回、同じことを聞かなければならないマスコミの人たちにも、申し訳ないなというふうにも思っていました。今シーズンの最後の最後だったので、正直、最後の登板で勝つことができなかったら、「年を越せないな」「気持ちが悪いな」と思っていて。あれだけ周りの方に盛り上げていただいて、勝てないままシーズンオフに入ってしまうということが想像できませんでしたね。
──2007年の1勝目からすべてが始まりましたが、1年目から2ケタ勝利を達成しています。3年目からはMLB時代を含めて11年連続2ケタ勝利ですが、「2ケタ勝利」というのは当たり前のものだったのでしょうか。
田中 昔から自分の中で勝手なイメージとして持っていたのは、先発投手として2ケタ勝利を挙げるというのは、一つの勲章というか、1シーズンを通してしっかり投げて「活躍できた」と思える指標的なところではありましたね。ただ、当たり前だと思ってやっていたことはないです。「2ケタ勝ちたいな」という思いはあっても、そこを意識し過ぎてしまうと、僕は良くないかなと思っていて。ピッチングが窮屈になってしまったり、自分にとってはネガティブな方向に行ってしまうかなと思うので。若いときから、とにかく1年間先発ローテーションを守るとか、1年を健康に過ごしてマウンドに上がり続けるとか、そこを一番意識してやっていました。それさえやることができれば、自分の仕事はできると思っていたので。
──記録や数字はあとからついてくるということですね。
田中 とにかくマウンドに上がり続けるということですね。
──キャリアの中で「200分の24」となったのが13年のシーズンです。24連勝という「記録」が大きくフォーカスされましたが、一方で「負けられない」という重圧はなかったのでしょうか。
田中 特にシーズン序盤は自分自身のコンディションも調子もそれほど良くなくて、耐えながらゲームをつくっていくという試合が多かったんですけど、その中で勝っていくことができて、連勝が伸びていくたびに、登板前日の囲み取材におけるマスコミの方々からの質問であったり、書かれる記事であったり、連勝を意識するようなものは増えていきましたね。
──巨人との日本シリーズ第6戦では「初黒星」が話題になりました。
田中 シーズン中盤以降くらいからですかね。「どこまで連勝が続くんだ」という感じから、「いつ負けるんだ」みたいな感じに変わったのは。そうした雰囲気の変化というのは覚えています。確かに日本シリーズで負けたときは大きく騒がれましたけど、周りの方に「負けてあれだけ取り上げられるというのは、それもすごいことだよ」と言っていただいて。自分としてもそういった声には助けられたというか、「うん、そうか」と自分を納得させることができたというか。まだ第7戦がある中で、チームに貢献できる形が何かあれば、と最後まで気持ちを切らせることなくできましたね。
──やはりマスコミの声というのはフラストレーションになっていたのですね。
田中 ゲームになれば、パッとゲームに入っていくことはできていましたよ。だからそれは全然、試合では大丈夫だったんですけど、登板前日の囲み取材などがね。もちろん、マスコミの皆さんはそれが仕事ですし、僕だって質問に答えるのも仕事なんですけど……まあ、正直そういった部分はありましたね(笑)。
MLBでの日々
200勝のうち78勝がMLBの名門ヤンキースでの7年間で積み重ねたものだ。6年連続の2ケタ勝利は日本人メジャー・リーガーでは唯一の記録。それでもMLBでの7年間を「期待に応えることができなかった」と振り返る。 ──客観的に振り返るのは難しいかもしれませんが、あらためて「24連勝」という記録をどうとらえていますか。
田中 すごいなと思います(笑)。当然ですけど、ピッチャーの勝ち星は得点が入らないことには付かない。自分たちのチームが取った得点より少なく抑えないと勝てないですし、勝ち星にはならないので。それを24勝0敗で終わることができたというのは・・・
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