日本が誇るホームランアーチストと結ばれたのは、低迷期から抜け出すべく、再建の道を歩むホワイトソックスだった。いかにして村上にフォーカスを当てたのか。そこには、スカウト部門を中心にした獲得への努力があった。 取材・文=小林篤 写真=Getty Images、桜井ひとし 
村上が選んだのはホワイトソックス。写真左は会見に同席したクリス・ゲッツGM
見るのは数値だけではない
2025年12月22日(日本時間23日)、
村上宗隆のホワイトソックス入団会見が行われた。NPB在籍経験のある日本人選手がチームに加わるのは、12年の
福留孝介以来となる。NPB球団から直接の移籍となれば、ダイエーから05年に海を渡った
井口資仁以来、実に21年ぶりの出来事だ。
編成の最高責任者であるクリス・ゲッツGMは村上の獲得にあたり、「国際スカウト部門を統括するデビッド・
ケラー氏には心から感謝している」と入団会見の場で述べた。今回、そのケラー氏を含む球団関係者3名のインタビューが実現。NPB通算246本塁打の大砲のどこに惚れたのか、またどのような期待を懸けているのかを聞いた。
国際スカウト部長兼GM補佐のケラー氏は24年9月に入団。17〜24年途中まではメッツで特別スカウトとして働いており、当時から村上の存在には注目していたと言う。ただ、ホワイトソックスは日本市場のマークが薄かった。それが10年以上NPB出身の日本人選手が在籍していない一つの理由でもあった。
「私が入団した時点では、日本にスカウトがいませんでした。日本にも素晴らしい能力を持つ選手は多く、それこそ
山本由伸選手も
大谷翔平選手(ともにドジャース)も、村上選手だってそうです。そこにスカウトがいないのはもったいない。日本の市場にもっと力を入れるべき、そこを一つの重要事項としてフォーカスし、日本のスカウトを雇うということでいろいろな人を探しました」(ケラー氏)
手薄になっていた日本市場の開拓にケラー氏は動いた。そして、日本エリア担当の国際スカウトとして、NPB選手を調査することになったのが高橋賢史氏だ。高橋氏は早大野球部の学生トレーナー、早大大学院を経て21〜24年に
オリックスのアナリストとして活動。25年2月にカナダへ留学するのだが、縁あって7月にホワイトソックスに入団した。シーズン終了までの約3カ月間、日本国内でスカウティングの日々。昨季まで
DeNA所属の
アンソニー・ケイがホワイトソックスに入団した事例からも分かるように、対象は外国人選手も含まれている。もちろんMLB挑戦を控えていた村上もターゲットの1人だった。
データ全盛の現代において、MLB球団側はNPBのトラッキングデータも活用して選手を調査する。だが、重要なのは数値だけではない。それ以外の点もスカウトには求められるとケラー氏は言う。
「ゲッツGMの思想が、チーム全体に行き渡っている形になっています。企業秘密で詳細は言えませんが、投手・野手ともに重要なメトリクス(測定基準)はあります。ただ、加えて大事なのが人間性。うまくいっているときも、スランプでうまくいっていないときも、どういう精神面で野球と向き合っているのか。どういう人物なのかもすごく重視しています」
だからこそ、現地でのスカウティングが生きてくる。高橋氏は練習から視察し、数値には表れない情報についても、ケラー氏をはじめとするチームスタッフに提供をしてきた。
「プレー自体はもちろんですが、練習であったり、ベンチでの行動であったり、どういった選手、コーチとコミュニケーションを取っているかであったり。アメリカからアクセスすることができない情報を得るように心掛けています。視察は想像になってしまうため限界があり、球団関係者との会話を通して情報を得ることもありました。村上選手は野球に対する気持ちが強く、チーム全体を強く思っている。何より勝ちたい気持ちが強い。あとは、外国人選手とのコミュニケーションの部分でも高く評価していました」
国際スカウト部長の役職に就くケラー氏も・・・
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