現場の監督とも言える「扇の要」。今大会は捕手3人制で連覇に挑むが、ここでは虎の正捕手に話を聞いた。自分の役割が何なのかを認識し、妥協なく勝利に向け、ひたむきに研究を進めている。この司令塔がいるからこそ、投手陣もさらなる輝きを放つ。 取材・構成=椎屋博幸 写真=榎本郁也 時間の選択との戦い
坂本誠志郎の最大の武器は、強打や強肩ではない。投手陣への配慮、そして打席での打者との駆け引きである。いわゆる「間(ま)」を操ることだ。WBCではピッチクロックが採用され、「間」に制限ができた。そこをどう埋めていくのか──。 ──宮崎合宿も終わり、いよいよ大会開幕が近づいてきました。
坂本 まずは本番までに、しっかり自分の状態を仕上げなければいけないとは思います。ただ、いつものシーズンと同じように、これまでどおりの調整をすればいいし、特別なことはしなくてもいいんじゃないかと。
──それでもWBCのことはやはり、想像してしまいますか。
坂本 もちろん、想像はします(笑)。想像して考えて、現状でできることをやっていこうとは思っています。阪神のキャンプ中も、最大限できることをやっていました。宮崎に入ったあと、合宿でしか取り組めないこともありました。だからこそ、阪神のキャンプ中はその時期にしかできないことに集中していました。
──「想像できること」とは、具体的にどういうことをやってきたのでしょうか。
坂本 ピッチャーの球をどういう感じで捕球して、どういうタイミングで返すか、ということ。そして11月の強化試合をもう一度復習し、そこから何ができるかを膨らませ「反省」として残ったことや「もっと何かできたな」と思ったことをあぶり出していくという作業ですね。
──強化試合を経験して、もっとできることが見つかったのですね。
坂本 ピッチコムと、ピッチクロックの使い方を経験できたのは大きかったですね。あのときは自分の中で秒数を気にして「早く、早く」という思いが強過ぎました。また、日本野球の特徴である「間」の使い方ができない。その分、ジェスチャーでどうそこを伝えるのか、どうすればいいかを考えていました。
──サインを出す「間」を制限されたときに、どういう弊害が出たのでしょう。
坂本 今までサインを出すのは指でした。その指には、意思を乗せられます。「ここは強くね」「ここは間を取ってから」など。でも、ピッチコムは音のみ。だとしたら、自分の思いをどういう形でピッチャーに伝えるのか、ということも考えました。
──「ここは強く投げてほしい」というときに、ピッチコムの音量は大きくできないですよね。
坂本 はい。僕がピッチコムのボタンを強く押せば、強い音が……ということではないんです(笑)。そこはやはり・・・
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