2016年のファイターズのリーグ優勝、日本一を語るうえで、やはり大谷翔平の存在は欠かせない。最後まで優勝を争ったホークスの捕手としてしのぎを削ってきたからこそ感じた強さ、そして、今もなお続く投打二刀流での活躍の要因について紐解いていく。 取材・文=多田まりや 写真=BBM、高原由佳 
7月3日の試合での鮮やかな初球先頭打者弾が、ファイターズの勢いを加速させた
流れを変えた先頭打者弾
2016年は高卒入団4年目。すでに打者としては、バッティング練習の段階で、飛ばす力が明らかに違いました。チームには
レアードという右のホームランバッターもいましたが、彼と比べても全然違う。体が大きくなるにつれ、飛距離などで練習から圧倒していた感じです。もともとのテクニックやスケールの大きさはあったと思いますが、プロに入り年々フィジカルが上がるにつれて、プレー自体のすごみも増していました。肉体的に強くなっても、技術が伴っていかない選手は結構いますが、大谷選手の場合は技術に加え、数字も上昇していきました。
直接対決で印象に残っているシーンは、やはり7月3日、DHを解除して“一番・投手”というリアル二刀流として出場した直接対決3連戦(ヤフオクドーム)の最後です。その試合前までは、首位ホークスが2位ファイターズとのゲーム差を7.5に離していたため、チーム内に「まだ大丈夫だろう」という雰囲気が少なからずありました。
僕はその試合に出場していませんでしたが、一塁ベンチで見ていても、登板時に打順に組み込まれるリアル二刀流の効果を、まざまざと感じさせられました。しかも彼が一番打者でしたので、打順の組み方で、
栗山英樹監督(現CBO)がかなり勝負をかけてきたな、と。この試合でファイターズに負けたらまずいぞ、という感覚があったんです。1回表、そんな空気を加速させる、大谷選手の初球先頭打者ホームランが飛び出しました。打球はホークスファンで埋まった右翼席に吸い込まれていったんです。
大谷選手の自身初の先頭打者弾からパ・リーグの風向きも、ガラッと変わりました。7月1、2日と連敗したときから、流れはややファイターズへ傾きかけていましたが、この大一番となった3日も負けたことで、ホークスからしたら向かい風、ファイターズからしたら大きな追い風が吹いてきた。投げては最速161キロをマークし、8回無失点、10奪三振で、チームは10連勝。本物のスーパースターとは、こういう場面で結果を出すものであると、再確認した試合でした。
ホークスからしてみれば、このカードでファイターズに3連敗し「これはちょっと、ヤバいんじゃないか。首位を奪われるんじゃないか」という雰囲気へと変貌したのをすごく覚えています。ファイターズの強さ、勢いがより加速したので、個人としても、嫌なイメージを植え付けられた苦い記憶があります。
7月1日までの
日本ハムとの対戦成績は5勝5敗(1分)でしたが、これ以降は4勝10敗。明らかに劣勢の展開ですね。9月21日、22日、最後の日本ハムとの連戦(ヤフオクドーム)では、両試合ともベンチで見ていましたが「いつ、試合に出るんだろうか」とすごく緊張していました。シーズン終盤、やはりファイターズに流れがあったなかで、ホークスとしても絶対負けられない雰囲気だったんです。21日は1対2で迎えた9回裏二死二、三塁と一打サヨナラの大チャンスで
江川智晃が大飛球を放つも、センター・
陽岱鋼のスーパーキャッチが飛び出し・・・
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