大谷翔平は10時間眠る。休養を取り、回復させるための事実は大きく知れ渡っている。しかし、研究をする立場からすると、「なぜ眠れるのか」という現実に行き着くのだという。ここでは大阪大学名誉教授の池田学氏に、大谷の特異な睡眠について考察していただく。 写真=Getty Images 
1日10時間以上の睡眠を取るという大谷。その取り方にも秘密がある
質と量を確保する
アスリートにとって「睡眠」はどのような意味を持つのか。この問いを考える上で、最も象徴的な存在として大谷翔平選手を挙げます。彼の圧倒的なパフォーマンスを支える要素の一つとして、しばしば注目されるのが「睡眠」です。しかし私が強く引っかかるのは、その「長さ」ではありません。むしろ、彼が“きちんと眠れている”という事実そのものです。
一般的に、人間の睡眠には個人差があり、「
ロングスリーパー」と呼ばれる長時間睡眠が必要なタイプと、「ショートスリーパー」と呼ばれる短時間でも問題なく活動できるタイプが存在します。多くの成人にとっては7〜8時間の睡眠が適切とされていますが、あくまで平均値であり、万人に当てはまる絶対的な基準ではありません。年齢、日中の活動量、ストレスの強さ、さらには体質によって、必要な睡眠時間は大きく変わります。
その中で、大谷選手は約10時間の睡眠を取ることで知られています。この数字だけを見れば「長い」と感じるかもしれません。しかし私にとってはむしろ別の疑問が浮かびます。これだけの負荷がかかる環境の中で、そもそも10時間“眠ること自体が可能なのか”。ここがどうしても引っかかります。これは、単に長いかどうかの問題ではありません。
メジャー・リーグの選手は試合後に時差を伴う移動が多く、興奮状態にあります。アドレナ
リンが分泌され、心拍数も上がり、頭は試合内容の反省や次への課題で回転し続けます。うまくいかなかった試合であればなおさらで、悔しさや反省が思考を止めず、結果として寝付けないというケースは珍しくありません。実際、ほかのプロ野球選手への取材でも「試合後はなかなか寝られない」「朝方まで起きてしまう」という声を多く聞きます。そう考えると、多くの選手にとって問題は「どれだけ寝るか」ではなく、「そもそも寝られるかどうか」にあるはずです。
だからこそ、大谷選手の特異性は・・・
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