どちらかと言えば、控えめな性格であった。安全策を歩むタイプだったが、神宮で実績を重ねるにつれて、意識が高まった。立場が人を変える、その典型である。「仲間」がいるプロの世界へと突っ走る。 取材・文=岡本朋祐 写真=矢野寿明、BBM 
神宮のマウンドは人として、投手としても成長させてくれた大切な場所である。日々、積み重ねてきた練習の成果を発揮するだけであり、怖いものはない
「マックさん」との出会い
慶大は2024年秋から昨秋まで、3季連続5位と苦しんでいた。堀井哲也監督はテコ入れ策として26年1月、投手コーチに上田誠氏(慶応高前監督、四国IL/香川球団社長ほか)、内野守備コーチに
上田和明氏(元
巨人)を新たな指導スタッフとして要請した。2年ぶりに投手の専門職が就き、状況が一変。堀井監督は上田投手コーチの就任の経緯をこう明かしていた。
「昨年まで独立リーグで投手を中心に指導し、かつて率いた慶応高を『強豪』に育て上げた手腕がある。上田さんとは、三菱自動車岡崎とJR東日本の監督時代から交流があり野球観、投手を見る目が素晴らしい。投手トレーニングのノウハウを持っており、ケガ防止、体づくりを含めての指導に期待できる」。慶応高で春3回、夏1回の甲子園出場の実績に全幅の信頼。2月の鹿児島キャンプから投手陣との対話を通じて強化を進めていた。
渡辺和大にとって、上田投手コーチとの出会いが転機となった。リーグ戦初勝利を挙げ、初めて規定投球回に到達した2年秋に最優秀防御率(1.17)のタイトルを獲得。さらなる飛躍が期待された3年春は防御率4.25、同秋は4.75と数字を大きく落とした。どん底にいた。
「自分が1年間、何が悪いんだろう、何がダメなんだろうとさまよっていた中で、普段の練習から、さりげない言葉をめちゃくちゃ掛けてくれたんです。全然はまらないときもありますが……(苦笑)、はまったときの感覚が良いんです。引き出しが多いので、新たな発見があり、投げていて、ピッチングが楽しくなりました。寄り添ってくれるので、決して無理強いではなくて、僕のことをしっかり見て、『これ、合うんじゃない』みたいなアプローチで、本当にありがたいことばかりでした」
上田投手コーチは「マックさん」と親しまれ、学生との距離が近い。馴れ合いではなく、深い信頼関係がある。渡辺和が合致したのは、フォーム改善だった。
「二段モーションにして、投げ急がないようにしました。『ちょっと早い』と言われまして……。それが一番、良かったです」
フィジカル面も変わった。ケガをしないためのウエート・トレーニングと栄養摂取。昨年までは78kg前後を推移していたが・・・
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