高校生の成長スピードは末恐ろしい。2年秋の段階で最速147キロ。ひと冬を越えた3年春の県大会で大台を突破して151キロを計測すると、最後の夏は156キロにまで伸ばした。そして、甲子園不出場メンバーでは唯一の侍ジャパン入り。ドラフト戦線でも、中心になりそうな勢いである。 取材・文=沢井史 写真=三野良介 
過去に富山県の高校から直接、ドラフト1位指名を受けたケースはない。NPBスカウトから高い評価を受けており、歴史を塗り替える可能性を秘めている
無念の富山大会準決勝敗退
夏の甲子園が閉幕したばかりの8月末。1、2年生が練習試合を行っているグラウンド横に案内されると、二塁方向を見ながら、高岡第一高のコーチが口にした。
「二塁塁審をしているのが、前田です」
酷暑であろうが、自身の練習の合間を縫って、新チームのサポートを続けていたという。今夏の
富山大会まで支えてもらった後輩への「恩返しの場」。
前田侑大の律儀な性格を示すエピソードである。
今夏、前田の登板試合は衝撃が続いた。富山工高との富山大会初戦(2回戦)では7回で14奪三振、自己最速を5キロ更新する156キロをマークした。富山北部高との3回戦では圧巻の20奪三振で、ノーヒットノーランを達成している。
「立ち上がりから四球が多かった(9四死球)んですけれど、それでも何とかゼロに抑えようと思っていました。初球から厳しいコースを狙ったんですが、どうしても、ボールが先行してしまったんです。最後まで厳しく攻められたとはいえ、ノーヒットノーランのことは、最後までまったく意識していませんでした」
20奪三振については、こう明かした。
「三振の数は投げるごとに『これくらいは取れているかな』とは思っていました。でも1試合で20個は……。野球をやってきて初めての数字です」
試合後に聞かされても、特に驚きはなかったという。試合ではいつも冷静。どんな状況でも表情に出さずに、淡々と投げられるのが前田の強みでもある。
ただ、高岡商高との準決勝では試練を味わった。これまでの高岡西部総合公園野球場から、メイン会場の富山アルペンスタジアムとなり、マウンドのちょっとした硬さに違和感があった。1対4とビハインドの4回から三番手で救援も、なじめずにいた。相手も研究を重ねていた。
「高岡商の各打者はボールの高さの目付けができていて、高めで三振を取ろうとしてもこのコースを捨てていて、三振の数が少なかったです(6回で6奪三振)」
徹底した対策で攻略してきた。前田自身・・・
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