
優勝が決まった翌日の10月4日、DeNA戦[横浜]を戦い終えてファンにあいさつする藤川球児監督
連覇を懸けた戦いの週明け、始まりは雨だった──。
9月26日のDeNA戦(横浜)に勝利してマジック4。甲子園に帰り、中2日を空けて同29日の
ヤクルト戦(甲子園)でマジック3、もしくは2にして、本拠地での胴上げを目指していた。だが……「大雨降太郎」と言われている
大竹耕太郎が先発ということもあるのだろうか、午後には上がると言われた雨が、試合開始時間を過ぎても降り続けた。
18時30分、「ええ〜!」という観客の声がこだまする。電光掲示板には「試合中止」の文字が……まさかの展開に、ファンは
巨人対
広島(東京ドーム)に注目。だが、3対1で巨人が勝利し、マジックは4のまま。週内残り2試合の甲子園での胴上げは絶望的になった。
迎えた翌30日の同戦は一転、秋晴れでスタート。初回の攻撃で右前打を放った一番の
近本光司がけん制死、
中野拓夢も左前に運ぶも走塁ミスで二塁憤死と好機を逃す。だが、先発・
高橋遥人は誰もが勝つだろうと予測する中で当然のように快投を披露する。8回4安打無失点と盤石の投球で、2対0の7回には自らのバットで左前適時打を放つ大車輪の活躍。5対0でマジック3とした。
優勝戦線は10月に突入した。1日は甲子園で2位・巨人との最終決戦。勝てばマジック1となり王手をかけられる。そんな中で初回から3回まで立て続けにチャンスをつくるが、得点に結びつかず、粘りの投球をしていた先発の
村上頌樹が4回に先制点を奪われる。6回に
大山悠輔のソロ本塁打で同点とするも、8回に1点を奪われ、誰しもが万事休すと思ったはずだ。9回、巨人のマウンドには絶対的クローザーの
R.マルティネス。一死後、中野の二塁打から二死二、三塁。ここで大山がカウント3-2から153キロ、内角の真っすぐを中前にはじき返し、土壇場で同点に追いついた。
この瞬間、8回に追加点を奪われていたリリーフの
及川雅貴はベンチで号泣。敗色濃厚だっただけに、観客も涙を流すほどの土壇場での同点劇。延長に突入すると、ここから両軍とも一歩も譲らず12回裏、2対2の引き分けに終わる。今季最長の5時間5分の死闘。終了時刻は23時過ぎ。電光掲示板には
阪神電車の終電のお知らせが出るほどの長い試合。だが、これでマジックが1つ減り、2となった。
広島への移動日となった同2日、神宮でのヤクルト戦で巨人がまさかの敗戦。戦わずしてマジックが1へ。ついに王手をかける。
翌3日、マツダ広島での広島戦。14時からの試合で11時にグラウンドに着いた選手たちは、笑顔でウォーミングアップを行うなど終始リ
ラックスした様子。先発の
才木浩人の制球がまとまらず2回に先制を許すも、3回に
坂本誠志郎のソロ本塁打、
佐藤輝明の3ランで4点を奪って逆転に成功する。今季、得意としていた先発が抑え、四番が打つという、絶対的な勝ちパターンが飛び出したことで、誰もが「優勝」を確信したはずだったが――。
同点の8回、中継ぎ陣の乱調でまさかの勝ち越しを許して敗戦。この日の胴上げがなくなった。宿舎に帰った選手たちは、ナイトゲームで行われた巨人対DeNA(東京ドーム)をテレビ観戦。1球ごとに注視する。結果はDeNAが5対2で逆転勝利。この瞬間、2リーグ制以降、球団初となる連覇達成となった。
9回二死になったところから、選手たちは宿泊ホテルのビューイング会場に集まり、モニターでそのときを見守った。優勝の瞬間、喜びの声を上げつつも、全員が冷静に優勝Tシャツに着替え、用意された別のホテルの祝勝会場へ向かった。
祝勝会の壇上に上がった選手会長の村上は、以前からあいさつは「長く話をして、みんなをじらす」と宣言していた。だが、実際には村上本人が一刻も早くビールかけをしたくて、したくて……。一言だけ野手に冗談で苦言を呈してから、一斉に歓喜の宴が始まった。
喜びの渦と泡にまみれながらの連覇。3度目の祝勝会を経験した
桐敷拓馬は「3度とも違う感覚のビールかけでした。今年もめっちゃ楽しみました」と満足気な表情で優勝の味に酔いしれた。
だが、シーズンはまだ続く。夜中まで祝杯を挙げ、深夜3時近くまでテレビ出演などをこなし、翌4日は広島から横浜への大移動。多くの選手が朝7時台の新幹線で横浜へと向かい、16時からの試合前練習では明るく元気な姿を見せた。
胴上げを目指したこの一週間、雨に始まり、勝ち星には恵まれなかったが、それでも最後は栄光のリーグ連覇にたどり着いた。

昨年のMVPに輝いた佐藤輝明[写真中央]が今年もチームをけん引。史上9人目の三冠王も間違いないだろう[写真=高原由佳]