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巻き返しを誓うエースは何を思っているのか

開幕直前インタビュー 石川雅規[ヤクルト/投手]

 

もうすぐ開幕。
昨年までの8年間のうち7回も開幕投手に選ばれた左腕は、今年もまっさらなマウンドの上でロジンバッグの粉を舞い上がらせるのだろうか。
昨年はプロ11年間で2回目の「1ケタ勝利」に終わったヤクルト・石川雅規にとって、雪辱を期すシーズンが始まろうとしている。
開幕を控えた今、エースの胸中に迫った。
取材・構成=落合修一
写真=糸賀正



昨年の無安打投球は、開幕戦だったから

――いきなりですが、石川さんにとって、開幕とは何ですか。

石川 特別なものですね。毎年、開幕投手を目指しています。1年目のときでさえ、最低でも開幕ローテに入ろうと思っていました。開幕がすべてではないですけど、プロとして開幕投手の緊張感を味わえるのは幸せなことです。

――人によっては、「開幕戦は144分の1に過ぎない」という考え方の選手もいると思います。しかし、石川さんはそうではないと。

石川 僕は小さいころからテレビで、チームのエースと言われるすごいピッチャーが開幕戦で投げているのを見てきましたからね。そういう意味では、開幕投手はすごい人がやるものだとずっと思っています。確かに、144分の1と言ってしまえばそれまでなんですが、僕はそれだけではないと思いますよ。開幕投手に選ばれたら名誉なことですし、意気に感じます。

――子どものころのテレビの記憶というのは、具体的には。

石川 小さいころはジャイアンツ・ファンだったので、斎藤雅樹さんです。開幕戦に強いし、開幕戦に勝って、そのまま年間通して大活躍というイメージが強いです。すごかったですよね。

――昨年の開幕戦では石川さんも巨人戦で9回一死までノーヒットノーランと好投しました。いま振り返って、いかがですか。

石川 あれは出来過ぎです。開幕戦ということで、対戦相手も緊張していたので、そういうことに助けられて、たまたまでしたよね。でも、あそこまで行ったら、達成したかったですよ。あと2人だったので。それがちょっと悔しかったです。なかなかそういう機会はないですからね。ましてや開幕戦という、自分にとっては特別なゲームだったので。そこでそういう大記録を達成できていたら、野球選手としてもう一皮むけていたのかなと思います。でも、できなかったというのが自分らしいかな、という気も……。とにかくあのときは、いつも以上の力が出ました。それは、開幕戦だったからです。

――ノーヒットだ、というのは意識していましたか。

石川 9回は、思い切り意識していましたね(笑)。「そろそろ(ヒットを)打たれるだろうな」と思いながらも7回が終わって、8回が終わって……。9回にマウンドに上がったときには「絶対にやってやろう」と。9回の先頭バッターは、代打の大田(泰示)君でしたね。結構いい当たりのレフトフライだったのですが、ここを切り抜けられたので、「よし、行ける」と思ったんですけどね。まあ、そんなに甘くなかったですね(笑)。

▲昨年3月30日の開幕戦、9回一死まで巨人を無安打に抑えるも、坂本に初安打を打たれた直後。守る野手たちも緊張していたという[写真=桜井ひとし]



横綱・白鵬に学んだ
「スランプではない」

――さて、今年も、自分が開幕投手になってやる、という気持ちは。

石川 そういうつもりではいますけど、そこは監督さんやコーチの方が決めることで、自分が決めることではありません。今年も静かに待っているところです。

――例年だと、「開幕投手はおまえだ」と「指名」を受けるのはどのくらいのタイミングなんですか。

石川 まあ、でも、だいたい今ごろですよ(取材日=3月6日)。早ければ、キャンプ中ということもあります。一度、小川監督になってから、キャンプ中に言われたこともありました。でもだいたい、この時期ですかね。そろそろ近いうちに、いつ投げるのか言われると思います。僕らは、言われた日に合わせて調整していくだけで。いずれにせよ、開幕3連戦のどこかで先発するのであれば、そろそろ言われると思います。

※取材後の3月9日、荒木大輔投手コーチは「石川と館山には最初の登板日を伝えた」と明言した。

――現時点で、調整はいかがですか。

石川 自分の中で今年はこう変えようという部分があって、それがいい方向に行ったり、悪い方向に行ったりしています。どっちにしろ、100パーセント安心してシーズンに臨めることはないので、納得する面をなるべく多く集めてから、開幕を迎えたいと思っています。

――100パーセントの状態で開幕、ということはないのですか。

石川 ないですね。毎年、不安が大半を占めますし、何が正解かというのはないですからね。「これをやっていればいい」と思っても、自己満足に過ぎないこともありますし……。結局、結果を出せば成功としかいえないじゃないですか。不安だらけですけど、時間は待ってくれないので、シーズンの流れをつかむピッチングをしたいです。

▲3月3日の日本ハムとのオープン戦は4回1失点とまずまずの結果に見えたが、本人は内容に納得していなかった[写真=榎本郁也]



――今年はフォークボールを覚えたそうで。

石川 昨年は自分自身8勝10敗という成績で、チームが大事な時期に2カ月半くらい勝てなかったので、何かを変えないといけないと思いました。しかし、年齢的にも、今からボールを速くするのは無理です。気が付いたら、身近に館山(昌平)という球界を代表するピッチャーがいる。フォークボールもすごくいいので、こんなに身近にいる人になぜ聞かなかったんだろうと、握り方などを聞きました。一つでも武器が増えれば、投球の幅が広がるんじゃないかと。

――落ちる球ということなら、すでにシンカーがありますよね。

石川 よく言われるんですけど、シンカーとは動きも違いますし、フォークを練習することによってほかのボールが良くなるかもしれないので、何かしらきっかけをつかみたいと思って、チャレンジしています。

――今のところ、どうですか。

石川 いやあ、やっぱり難しいですね。でも、今後も投げ続ければ、使えるメドは立ってくると思います。

――石川さんほどの実績があって、ベテランと呼ばれる年齢になっても、新しいボールを覚えるんですね。

石川 一年でも長くプロでやりたいし、生き残れるために、もっと野球がうまくなりたい、という気持ちで常にアンテナを張っています。若い選手でもいい変化球を投げていれば、どういうふうに投げているの?と聞きに行きます。自分にとって何がきっかけになるか分かりませんからね。野球人生一回ポッキリなので、後悔したくないんです。「目指せ!山本昌さん(中日)」なので、そのためにもどこかにヒントがないかと。

――例年の自主トレは山本昌さんと一緒でしたが、今年は村中、赤川らチームの若手を率いましたね。

石川 はい。刺激になりましたね。同じチームである以上は競争相手であるので、そういう意味では彼らにも勝たないと生き残れません。ボールだけなら彼らの方がすごいボールを投げます。でも、それだけではない部分でこれまでもやってきたので、まだまだ負けたくありません。

――昨年、2ケタ勝利が途切れました。その原因はどのように自己分析していますか。

石川 テレビで見たんですけど、横綱の白鵬さんが「スランプですか?」と聞かれて、「スランプではない。努力が足りないだけだ」と答えていたんですよ。すごくいいな、と思いました。自分のことを考えると、知らず知らずのうちに慢心があって、練習が足りなかったのかもしれません。何となく、このまま毎年2ケタ勝てるのだろうと。

――ヤクルトのエースは石川さん。われわれメディアはそう言っていますが、石川さんの考えは。

石川 僕はエースではないですよ。エースは大事な試合に勝ったりして、チームで一番信頼され、数字を残している人だと思うので、僕ではないです。エースは館山だと思います。僕は少し経験があるだけ。そう呼んでもらうのは光栄ですけど、もっと若い投手が出てこないと。僕や館山が3番手、4番手にいるようなら、チームはもっと上に行くでしょう。だからこそ、僕らも目の色を変えてやっています。

――石川さんから見て、館山投手はどのような存在ですか。

石川 年も近いですし、館山に負けたくないという気持ちでずっとやっているので、仲間でもあり、良きライバルでもあります。タテがいなかったら、ここまで頑張れていなかったでしょうね。彼がいてくれたおかげ、という思いはありますよ。
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