9月4日、本拠地・京セラドームにてオリックスが森脇監督の続投を発表した。
2000年代に入ってから、また、オリックス・バファローズになってからAクラス入りは08年の1度だけ。 本社設立50周年となる節目の2014年を迎えるにあたり、低迷中のチームをどのように立て直していくのか――。
森脇監督の手腕に期待がかかる。 
▲オリックス本社にとって節目の年となる2014年。チームは森脇指揮官の下で再建を図る
シーズン中では異例監督続投を正式発表 長年、低迷してきたオリックスが変革の時期を迎えようとしている。すべては
森脇浩司監督の手腕にかかっている。9月4日の対
ロッテ戦。場所は本拠地・京セラドーム。それは試合開始15分前のことだった。球団は報道陣を集め、シーズン中では異例とも言える監督の続投を発表した。瀬戸山隆三球団本部長補佐は
「(契約期間は2年で)前から決まっていたがこの日、正式に森脇監督に続投を要請しました。今後、このチームを変えてくれる気がする。采配もしっかりしている」と森脇監督の続投の理由を説明した。2014年はオリックス本社の設立50周年の節目のシーズン。続投要請を受託した森脇監督も「自分に課せられた責任を全力で尽くすだけです」と力強く語った。
オリックスはあのときの輝きを取り戻せるか――。リーグ連覇を果たした1995年、96年。
イチロー(現
ヤンキース)、
田口壮らが躍動し常勝軍団としてパ・リーグをけん引してきた時代も今や昔。96年のリーグ制覇、日本一を最後に優勝から遠ざかり、昨年まで4年連続Bクラスと低迷期に突入した。2000年代に入りAクラス入りは1度だけで、監督も成績に準じて恒例行事のように変わっていく(
岡田彰布前監督は10〜12年の3年間指揮を執った)。「がんばろう神戸」を合言葉に熱い声援を送っていたファンの数も次第に減っていくのは必然だった。
12年10月8日対
ソフトバンク戦。ヤフードーム(現ヤフオクドーム)でシーズン最終戦が行われたこの日、再建の切り札として指名されたのは、指導者として豊富なキャリアを積んだ名参謀だった。同年にチーフ野手兼内野守備走塁コーチとして入閣していた森脇浩司の新監督就任会見が行われた。同席した宮内義彦オーナーは「6位のチームをどうするのか、そう簡単ではない」と、ダイエー、ソフトバンクで
王貞治監督(現ソフトバンク球団会長)の下で長年コーチ経験を積み、「常勝軍団」のDNAを引き継いだ男に下位に低迷するチームの再建を託した。
近年、Bクラスが定位置となっているチームの復活が簡単でないことは、森脇監督自身が一番分かっている。今やAクラス入りが当たり前となっているソフトバンクも低迷時期があった。97年には南海時代から含め20年連続Bクラスのプロ野球ワー
SNSを駆使して国内外にアピール 復帰を望む声の後押しを受け、国内ではさまざまな動きが広がった。6月4日には都内で全日本野球協会と日本ソフトボール協会の合同会議が行われ、定期的に意見交換をする場を設けた。同月下旬には両協会は復活を呼びかけるチラシを約70万枚用意し、都市対抗野球や夏の甲子園の会場で配布。チラシには世界野球ソフトボール連盟(WBSC)のフェイスブックやツイッターのアドレスなども掲載され、野球協会の内藤雅之専務理事は「(フェイスブックで)“いいね!”をたくさんの人に押してもらい(復活を)呼びかける」と説明。NPBにも協力を要請し、プロ野球の会場でも配布された。当初は署名活動も検討されたがソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)での呼びかけの方が即効性があると判断された。時代の流れを読んだ「いいね!」作戦と言えた。
野球が公開競技から除外された背景には、世界的な野球普及の問題に加え、メジャー・リーガーの出場問題が挙げられる。IOCが放映権など商業価値の側面から、最も重視するのが一線で活躍するスーパースターの出場。IBAFは大リーグ機構(MLB)に対し、準決勝以降限定でメジャー・リーガーの参加を求めているが、確約を得られていない。だからこそ、最終候補に残ったとはいえ、決して楽観はできないのが実状だ。鈴木義信副会長は「MLBの協力がカギとなる。正直言って、(現時点で)レスリングに差を付けられている」と語る。その意味では交渉の行方がポイント。MLBの全面協力は影響力や収益力などの面でも大きなインパクトとなる。IBAFのフラッカリ会長は7月26日、NPBを訪れ、実施競技復帰に向けた活動への協力をあらためて要請した。MLBのバド・セリグ・コミッショナーはメジャー・リーガーの派遣について「(五輪が開催される)8月にシーズンを止めることはできない」と語っている。メジャー・リーグですでに絶大なる人気を誇り、収益にも反映されているだけに、必ずしも五輪の力を必要としていない。MLBが消極的な姿勢を示している中、フラッカリ会長は「アジアのプロ組織の存在は重要。MLBとの交渉も継続中で現実的な解決策はある」と、実施競技が決まる9月8日のIOC総会までMLBへの説得を続けることを約束した。競技復活となれば、20年に34歳と野球選手としての円熟期を迎える
ダルビッシュ有(レンジャーズ)の出場も夢ではない。第一線で活躍する選手が最高峰の舞台に立つことは、野球界全体にとっても大きい出来事だ。ストを記録。酸いも甘いも知るからこそ、現状の戦国パ・リーグを勝ち抜く難しさを理解している。就任会見では「(チーム再建は)容易ではない。それぞれが力を出し切れなかったというのは、間違った反省。現有戦力、10パーセントずつのレベルアップが最低条件だと思う」と、四番・
李大浩以外のレギュラー全員白紙を宣言。選手全員を横一線に並べ、競争心をあおった。
唯一無二の指導方法。対話を重んじて、丁寧かつ厳しく選手に接するのが森脇スタイル。練習に入る表情、試合に入る前の心構え。「自分の力を最大限に出すために何が必要なのか。必然的にやるべきことは決まってくる」。結果だけでなく、すべてにおいて準備の必要性、重要性を説く。就任後に行われた高知秋季キャンプ、今年春の沖縄・宮古島キャンプでは自らバットを手にノックを浴びせるなど、積極的に選手たちを指導する姿が目立った。
最下位からの巻き返しへ「変化」をキーワードに掲げ、固定観念にとらわれないチーム作りを始める。ケガなどもあり今季は実現しなかったが、12年まで守護神を務めた岸田に先発再転向を打診。抑えには150キロを超す直球が武器の
平野佳寿を固定。2年目右腕の
佐藤達也をセットアッパーに起用し勝利の方程式を確立。野手には2ポジション制を採用。
大引啓次の後釜には2年目のドラフト1位・
安達了一を起用した。オフには
糸井嘉男、
馬原孝浩、
平野恵一、
東野峻ら大型補強を決行。選手の士気を高めるため意識改革も行った。優勝経験のない選手たちのメンタル面を強化。「どの監督でも思うのは、球宴までは勝率5割で、後半勝負ということ。そういうセオリーは必要だと思うが、それは度外視したい。9月の大事なところでバテてBクラスになっても、意味のあるシーズンだと思えるようにしたい」。こうして、新生オリックスは13年シーズンが始まる前には優勝候補にも挙げられるようになった。
ケガに泣き、厳しい現実を目の当たりにした今季 しかし、現実はそう甘くはなかった。「多くの選手が加わったが、タフでないと混戦パ・リーグを勝ち抜けない」。指揮官も厳しい戦いになることは予想していた。通算180セーブ右腕の馬原が3月のオープン戦で故障。「右鎖骨下における腕神経叢(わんしんけいそう)の炎症」で長期離脱を余儀なくされる。野手のキーマンとして期待されていた平野恵は「右ふくらはぎの軽度の肉離れ」で開幕二軍スタートとケガ人が続出した。
シーズン序盤こそ開幕戦を実戦登板なしのぶっつけ本番で任せたエース・
金子千尋の復活、糸井、李大浩、
バルディリスの中軸が機能し2年ぶりとなる貯金を記録するなど、奮闘を見せる。
だが、徐々に勢いは落ちてくる。野手では生え抜き選手の不調が大きく響いた。昨年に負った右肩脱臼のケガから復帰した坂口智隆は一番に起用されながら打率2割前半と調子は上がらず、プロ12年目の
後藤光尊も不振で二軍落ち。和製大砲として期待された
T-岡田は自慢の長打を発揮することができないまま。投手陣では東野、
八木智哉といったローテ投手として期待した先発陣の不調。多くの誤算が森脇監督を襲った。相手投手の左右に合わせ変わる打順。相性によっての先発ローテーション再編。試行錯誤を重ねながらも、投打がかみ合わず順位は最下位に低迷している。
厳しい状況が続く中、「可能性がある限り、われわれは突き進むだけ。目の前の試合に全力を尽くすのみ」と、クライマックスシリーズ(CS)への望みを捨てずに戦ってきたが、9月7日のソフトバンク(京セラドーム)に敗れ、自力でのCS進出の可能性が消えた。ただ、わずか1年にも満たない間に森脇イズムは着実にチームに浸透しつつある。来年はオリックス本社設立50周年のメモリアルイヤー。V奪回が至上命令となり結果が求められる1年になる。苦難に屈しない森脇浩司なら実現できるはずだ。

▲エース金子を投手陣の軸とし、李大浩や糸井らが打線を引っ張ってきた今シーズン。Aクラス入りを果たすには、投打にわたる底上げが必要だ