4月2日の広島対ヤクルト戦(マツダ広島)、延長12回に及んだ激闘にピリオドを打ったのは、広島・堂林翔太のバットだった。大スランプ、左手首の骨折など、もがき苦しんだ昨シーズン。その苦しみを払しょくした鯉のプリンスが放った一発に隠された裏側に迫る―。 写真=松村真行 広島・堂林翔太が架けたサヨナラアーチの裏側 
▲4月2日のヤクルト戦(マツダ広島)、3対3で迎えた延長12回、ヤクルト・バーネットの高め真っすぐを右翼席へ運んだ
4月2日の広島対ヤクルト、3対3の同点で迎えた延長12回一死から広島・堂林翔太がバーネットから放った打球はマツダスタジアム広島の右翼スタンドに飛び込んだ。「最高です! 感触は完璧だったので、僕は入ると思いました」。今季7打席目のシーズン初安打は、自身2本目となるサヨナラ本塁打。やはり、鯉のプリンスは何かを〝持っている〟のかもしれない。
昨年の左手首骨折から復帰を期した今シーズン。オープン戦では一時首位打者に立つなど好調をアピールしたが、開幕直前のオープン戦3連戦では10打数9三振と急降下した。
中日との開幕戦(3月28日、ナゴヤドーム)に「七番・三塁」で出場も4打数無安打3三振。翌日からスタメンから名前が消え、この日も代打起用からの出場だった。
3月31日からは
野村謙二郎監督とともに早出特打を敢行。「我慢して毎日練習をし続けて、『やってきた』という自信を持って打席に入りました」。この日のノック中にイレギュラーした打球が右耳に当たり出血も意に介さない。右耳に巻かれたテーピングは、前を向いている証拠だ。
「(打球の)方向を考えるな。芯に当たれば飛ぶ」と、指揮官とともに
新井宏昌打撃コーチもアドバイスを送り続けた。そして飛び出した、持ち味でもある右方向への大飛球。「やっと僕の中で開幕。1本出たのは大きいです」。
悩み、苦しみ抜いた若鯉の中で何かが変わりつつある。カープの背番号7の復調は、23年ぶりのリーグVを目指すチームにとって大きな力となることは間違いない。

▲試合後のお立ち台では菊池、松山から歓喜のウオーターシャワー。待望の今季第1号を復調のきっかけにできるか。今季の成績は9試合、打率.222、4安打、2本塁打、5打点、0盗塁(4月13日現在)