“MLBオールスターチーム”を招いての2014SUZUKI日米野球は、侍ジャパンのトータル4勝2敗で幕を閉じた。侍ジャパンの得た収穫、課題とは。 文=坂本 匠[本誌] 写真=早浪章弘、高原由香 
▲ガスリー[ロイヤルズ]が大谷翔平に握手を求める
“音を楽しむ日”を最初に提唱したのは、2001年の
長嶋茂雄監督(
巨人、当時)だった、と記憶している。今でもどこかの球団で時折実施されており、真剣勝負が奏でる極上の音を全身で感じ取ることができる、スペシャルなイベントだと思う。今回の日米野球も、球音を“半分だけ”楽しめる5試合だった。
というのも、日本の攻撃時はお馴染みのトランペットと
コールが行われるものの、MLBの攻撃時の鳴り物はなし。もちろん、良いプレーには温かい拍手が送られるし、お気に入りの選手の名前を叫ぶファンもいる。しかし、ピッチャーがモーションに入ると、球場全体がシ~ン。彼らのリアクションを、固唾をのんで見守る、そんな雰囲気も、新鮮で良かったと思う。
札幌ドームに場所を移して迎えた第5戦も格別だった。先発・大谷翔平の160キロに迫る剛球が、
嶋基宏のミットをたたく音。メープル素材のバットが弾き返す乾いたミート音なども良い。
そして「ナイスボール!!」、絶妙のタイミングで掛けられる
松田宣浩の元気のいい声。侍ジャパンのピッチャーが3ボールと苦しむと、球場全体が拍手で後押しするのも札幌ならではか。しかし、突如沸き起こった拍手に、MLBベンチが戸惑っていたのは面白かった。誰か拍手の理由を説明してあげただろうか。

▲松田宣浩の“右足ケンケン”はメジャー軍団の話題の的に
もちろん、侍ジャパンの攻撃時、日本の野球文化である応援スタイルを否定するつもりはさらさらない。甲子園球場で行われた記念試合のMLB対
阪神・巨人連合での、虎ファンの大声援には、MLBの四番を打ったロンゴリアも「素晴らしい声援」と目を丸くして驚いたほどだ。
そんなさまざまな応援スタイルも見えた日米野球だが、親善試合ながら最後の戦いの場となった沖縄も独特だった。国内10球団がキャンプ地とする野球熱の高い土地柄からか、1万8000枚弱の入場チケットは、即日完売に近い状況。日中の最高気温が25度と夏日となった11月20日は、スタジアムも熱気に包まれていた。
声援は分け隔てなく、好プレーには指笛が飛びかったかと思えば、7回にはウェーブ(プレーの妨げとなるため、基本、球場でのウェーブ応援は禁止!)と、てんこ盛り。とことんまで楽しんでいる様子がうかがえて、日米野球がこの地で開催されて良かったと思う。それにしても、沖縄のスタジアムで聞く、BEGINの『島人の宝』の大合唱は最高だった。

▲11月20日、沖縄で開催された親善試合は大盛況
8年ぶりに開催された日米野球は成功だったのではないか。テレビ視聴率は、はなから期待していないが、観客動員では京セラドームでの第1戦が3万3003人、東京ドームでの第2~4戦が4万2277人、4万6084人、4万3705人、最も空席の目立った札幌ドームの第5戦でも3万159人とまずまず。5戦平均で約3万9000人なのだから、十分だろう。
しかも、第1戦からの3連勝で、早々に勝ち越し(優勝)を決定。総額1億円の賞金のうち、8000万円を侍ジャパンが持ち帰ることを戦前に予想することは難しかった。
MLBオールスターのメンバーに関し、「最強ではない」とケチをつける意見もある。確かに、当初来日予定だったプホルス(エンゼルス)、ハーパー(ナショナルズ)ら、超一流、一流どころのメジャー・リーガーが直前になって出場を辞退したため、飛車角落ちの感はある。
しかし、両リーグの首位打者であるアルトゥーベ(アストロズ)、モーノー(ロッキーズ)や、カノ(マリナーズ)といった超一流選手も。その他のメンバーも当然ながらメジャーでシーズンを戦った選手たち。平均年齢26歳以下の侍ジャパン戦士にとっては、メジャーの平均的な力の選手たちにも触れることができ、逆に自らとの力量の差を知る絶好の機会となった。

▲3勝2敗で優勝した侍ジャパンに5000万円
試合の中で見せるプイグの能力の高さには、あの
糸井嘉男が「身体能力がハンパないです」と目を輝かせ、167センチの小兵・アルトゥーベ、カノのセカンド守備をつぶさに見守った
菊池涼介は、「自分の見たものを、感じたものを持ち帰って取り組んでいきたい」と学ぶことも忘れなかった。スポーツ面から考えると、日米野球開催の大きな目的の1つは達せられたようだ。
チームとしての収穫も十分だった。中でもセカンド・菊池、ショート・
坂本勇人、センター・
柳田悠岐(今大会MVP)と3年後を十二分に託せるセンターラインを固められたのは意味がある。打っても一番・柳田、二番・菊池は、長打力も走力もあり、機動力を重視する小久保ジャパンからは切っても切り離せない存在となったのではないか。

▲大会MVPには柳田悠岐
攻撃面での唯一の不満材料は四番・
中田翔。目立ったのは第2戦の2安打と、第3戦のホームランだけでことごとくチャンスを潰した。
小久保裕紀監督はそれでも「四番は中田で行きます」と姿勢を崩さないが、本人がこれをどう受け止めてリアクションを起こすのか、注目したい。
一方の投手陣は先発の
前田健太、
則本昂大を筆頭に、右の
西野勇士、左の
高橋朋己とクローザー候補も起用に結果で応え、あらためて投手力の高さを証明するシリーズに。投打を含めて「この主力が日本球界を引っ張っていきます」と指揮官も手応えを得たようだ。
次回の侍ジャパンの活動は、来春3月に親善試合を行う方向で調整中。ただし、「若い選手中心」と小久保監督が明言しているため、今回の主力クラスは招集されない模様だ。特に指揮官は左腕不足を嘆き、先発左腕を欲しており、「
松井裕樹(
楽天)と
菊池雄星(
西武)」の両左腕の名前を挙げて奮起を促したが、果たして。