2シーズン連続で首位打者争いに参戦。2014年はキャリアハイの.327のハイアベレージで、侍ジャパンではチームメートの糸井嘉男に4厘差と迫った。今シーズンは春季キャンプから“首位打者奪取”を宣言、小久保ジャパンフル参戦中の銀次は、日本を代表するバットマンへと成長を遂げ、初の打撃タイトルとその先の世界の舞台を見据えている。 取材・構成=坂本匠 写真=佐藤真一、BBM 取材協力=ANAクラウンプラザホテル神戸 4厘の差を埋める 15年のテーマは我慢

今シーズンは35試合終了時点で打率.314はリーグ6位と順調な滑り出し。4月12日のオリックス戦(コボスタ宮城)では、サヨナラタイムリーで勝負強さを見せた
──春季キャンプから“首位打者”を宣言してのプロ10年目のシーズンですが、35試合を終えて打率.314、リーグ6位は順調な滑り出しなのではないですか。
銀次 いつものシーズンに比べると、良過ぎる感じがしています(笑)。
──44安打は単純に計算すると、シーズン180安打ペースです(※銀次は13年の153安打が最多)。
銀次 この時期にこれだけヒットが打てて、率も残せているのは良いこと。できる限りこのペースを保ってシーズンを戦えればいいですね。
──シーズンが始まる前の時点で、〝首位打者”を、しかも公の場で言葉にして発したのは、どのような考えがあってのことですか。
銀次 昨年、糸井(嘉男、オリックス)さんと最後までタイトルを争って、13年も最終的には離されましたけど、一時首位打者争いをして、手応えを感じました。それに、プロ野球の一軍でやっている以上は一番になりたいですからね。そういう思いもあって、言葉にしました。
──昨年は首位打者となった糸井選手との差は、わずかに4厘でした。2010年にはイースタン・リーグ首位打者を獲得していますが、一軍でタイトルを争う感覚はどのようなものでしょう。苦しかったのでは?
銀次 最後の最後で手が届かなくて、悔しい思いはあったんですけど、素直に相手の方が上だったのかなと。でも、すごく楽しくて、苦しさはなかったですね。プロに入って9年目でこのような形になることは初めての経験ですし、すごく楽しめました。最後に及ばなかったのは、自分の力不足というか……、残念です。
──この届かなかった4厘差を埋めるために、今シーズン、新たに取り組んでいることはありますか。
銀次『我慢をする』ことです。去年は悪いボールにも手を出してしまうことが多かったので、しっかり見極めて、いかに打たないか。
──それは意外です。銀次選手は仕掛けの早いタイプで、積極的にファーストストライクから打っていく印象があります。
銀次 そうですね。それが自分のスタイルだと思います。でも、その中で、同じストライクでも、厳しいコースには手を出さない。そこに手を出してしまうと、バットには当たるんですが、結局は凡打になってしまう。そうならないための『我慢』です。
──開幕して1カ月半、『我慢』はできていますか?
銀次 やっちゃったな、というときもまだ、めちゃくちゃあります(苦笑)。逆に「いま、見逃せた」という良い感覚もあったりして……、なかなか難しいですね。見逃す勇気、そして我慢、今年のテーマです。日米野球で学んだレベルアップのカギ
──侍ジャパンには、
小久保裕紀監督が就任した2013年のチーム立ち上げから招集を受けています。日本代表は銀次選手の中で、どのような位置づけにあるのですか。
銀次(カテゴリー・年代別を含めて)この13年が初めての日本代表でした。アマチュア時代もまったくそういうものには縁がなかったので。06年のプロ入りで、この年に始まったWBCもテレビで見ていましたが、すごい選手たちがいて、夢のような舞台というふうに思っていました。
──13年の台湾遠征は“26歳以下”という条件付きの代表ではありましたが、初めてジャパンのユニフォームに袖を通したときの感情を覚えていますか。
銀次 うれしかったです。すごくうれしかったですけど、日の丸を背負う以上、“26歳以下”とはいえ、緊張はしました。全試合(台湾代表と3試合)に三番で使っていただいて、すごく良い経験をさせていただきました。ヒットは1本しか打てなかったですけど(苦笑)。
──当時は条件付きの代表でしたが、そのメンバーの多くが現在でも侍ジャパンの中核を成しています。
銀次 みんな「また絶対に選ばれる」という意地もあったと思います。僕の中では台湾に行ったことで、本当の日本代表、日本を代表する選手に少し近づけたのかな、という感覚を持てるようになったことも大きかったですね。
──13年以降、3つのすべての大会(13台湾遠征、14日米野球、15欧州代表戦)で招集を受けるようになった現在、侍ジャパン、日本代表への意識の変化はありますか。
銀次 プロ野球選手である以上は、今後、代表の活動すべてで選ばれたいという気持ちが強くなりました。日本の野球選手の誰もが、日の丸を背負って野球をしたいと思っているんじゃないですかね? 特に代表のユニフォームを着てプレーしたことで、そう思うようになりましたし、チームに戻っても日の丸を背負っていることを自覚して、プレーもしています。
──これまでに3つの大会に出場していますが、代表活動を経て、今に生きていること、影響を受けたことは何ですか。
銀次 やっぱり、昨年の日米野球ですね。メジャーのトップレベルの選手たちを見てレベルが高いな、と感じました。自分はショックを受けたんですよ。
──ショック?
銀次 ピッチャーではなく、バッターに、ですよ。中でもスゴいと思ったのが、アルトゥーベ(アストロズ)です。
──14年のア・リーグの首位打者&盗塁王ですね。
銀次 あんな体(167センチ79キロ)なのに、大谷(翔平、
日本ハム)の真っすぐを一発でカパーンと仕留めるんですよ!(※11月18日、日米野球第5戦、札幌ドームの初回、2球目をライト前へ痛烈なヒット)初めて対戦するピッチャーで、あんなに球が速いのに一振りで、芯でとらえる。やっぱり違うな、というのはありましたね。ただ、彼らを見ていま、参考にしているのは走塁面。ちょっとでもスキがあれば、次の塁を狙う意欲、意識が実は半端なく高い。少しでも捕球体勢が悪かったりしたら、それを見逃さないんですよ。際どいところでも攻めてくる。
──意外ですが、メジャーにいわゆるその抜け目のなさを感じたわけですね。
銀次 はい。走塁面を含めて、実は野球がすごく細かかったですね。一般的にメジャーって、パワーというイメージで、細かいことは気にしなさそうな感じだったんですが、すごく細かかった。そして、よく見ていますね。弱いところをバッと突いてくる。こういう部分って、意識の問題ですぐにでもできると思うし、マネしなければならないと思います。そうしたら、日本のプロ野球もパッとレベルが上がるんじゃないかなと。自分はそう感じました。
──それを
楽天でも、侍ジャパンでも実践していこうと。
銀次 そう考えています。
──では、日本代表の中での役割をどう受け止めていますか。
銀次 出塁することと、チームの盛り上げ役です。元気を出す、前向きに野球をする、そういう姿勢を見せたいなと。日米野球でも、マッチ(
松田宣浩、
ソフトバンク)さんと自分がベンチを盛り上げるみたいな感じがありました。試合前の円陣での声出しは、なぜか全試合自分でした。いいんですけど(笑)。でも、代表に選ばれる選手は、みんな野球小僧ですね。みんな野球大好き。グラウンドの中でも、外でも、野球のことしか考えていない。本当に野球を愛しているんだな、ということを感じました(笑)。

2013年11月の台湾遠征で小久保監督、嶋基宏、中田翔(後ろ姿)とともに笑顔を見せる銀次。小久保ジャパンには彼らとともに立ち上げからフル参戦中と、重要な存在だ
──ペナントレースは始まったばかりですが、オフには新たな世界大会である“プレミア12”が開催されます。
銀次 もちろん、出たいです。
──そのためにも、まずはペナントレースでのパフォーマンスが重要になってきます。
銀次 チームは昨年、最下位でしたから、優勝を奪い返すというのが第一の目標です。その中で、日本代表に選ばれるということを意識しながら、前向きに、強気の姿勢で、自分らしい積極的なプレーを見せていけたらいいなと思います。あとは、相手のスキを突いて、野球をする。
──日米野球で学んだことですね。
銀次 そこだと思います。(楽天も)今年から大久保(博元)監督になって、野球が細かくなりました。その中でも積極性を忘れるな、というのがチームの方針。
──銀次選手が目指している野球と通じるところが多いのでは?銀次 そうなんです。それに、プロ10年目でもう、中堅ですので、自分がみんなを引っ張っていく気持ちも強いですね。(プレミア12の前に)まずは楽天で、みんなで攻めた野球をしていきたいと思っています。
PROFILE (赤見内銀次/あかみない・ぎんじ)●1988年2月24日生まれ。岩手県出身。右投左打。174cm78kg。盛岡中央高から06年高校生ドラフト3巡目で楽天入団。入団時は捕手も09年に登録を内野手に変更。一軍デビューを飾った10年にイースタン・リーグ首位打者、翌11年から一軍出場を増やし、12年にレギュラーに定着。13年、14年は首位打者レースに参戦し、13年は日本一に貢献。14年はベストナインに輝いた。小久保ジャパンではここまで全大会に招集されている。 ユーザープレゼント 銀次選手の直筆サインボールを抽選で2名様にプレゼントします。締め切りは6月1日です。下記の応募フォームからお申込みください。
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