
初めてオーナー会議に出席した南場氏。貴重な意見を述べたという
IT業界で勝ち抜いてきたビジネス手腕への期待
プロ野球のオーナー会議に新しい風が吹いた。7月8日、東京都内のホテルで開かれた今年初めての会議に、1月に日本のプロ野球で初の女性オーナーとなった、
DeNAの南場智子氏が初めて参加した。球界の重鎮が居並ぶ会議の場で、南場氏は積極的に発言。「仲間に入れていただけて光栄に感じる。もっと厳かで形式的なものかと思ったけれど、実質的で真剣な議論が行われていた。この雰囲気であれば声も挙げやすいし、配慮もしていただいたので、今後も発言をして参りたいと思う」と前向きな感想を口にした。
今回の会議では、各オーナーが、日本の少子化と人口減少を見据えた野球振興策を議論する場が設けられた。南場オーナーには、DeNAの球界参入が認められた2011年の12月に横浜スタジアムを視察した際に女性を意識してトイレの改修を助言し、イメージアップにつなげたエピソードもあり、女性ならではの視点での助言が求められている。
話し合いを終え「今後の野球振興を考える上では子どもが重要。それには母親の影響が大きい。女性をしっかり巻き込んでいくことが重要になる。先輩オーナーの方々と力を合わせて一丸となって野球界を盛り上げていきたい」と語った南場オーナーに対し、熊﨑勝彦コミッショナーは「貴重な意見を出されていた。少子高齢化のなかでファン拡大の重要性を言っておられた。いい雰囲気になったと思う」と期待を寄せた。
顧客ニーズの変化がめまぐるしいIT業界で勝ち抜いてきたビジネス手腕への期待も大きい。南場氏は新潟県出身。津田塾大を卒業して米コンサルタント会社に入社し、米ハー
バード大で経営学修士(MBA)を取得している。携帯向けポータルサイトを運営するDeNAで1999年の創業当時から社長を務め、2011年に病気療養中の夫の看病に専念するため取締役に退いたものの、同社を飛躍させた。
オーナーとしてプロ野球に積極的に関わることになった南場氏は「IT業界は競争が激しく、非常に厳しい中で利用開始や利用し続けていただくことをやっている。野球ファンでない方にどうやってファンになっていただくか、またずっとファンでい続けていただくか」と課題を挙げる。
特に若い層のファンを拡大するにはIT技術は大きな武器になる。日本のプロ野球はメジャー・リーグに比べるとIT技術の導入で立ち後れている。パ・リーグ6球団は07年に設立した共同事業会社、パシフィック・リーグマーケティング(PLM)でIT技術を駆使し、6球団の試合中継をインターネット中継する「パ・リーグTV」などで収益を伸ばしているが、セ・リーグはなかなか新しい事業に踏み出せておらず、両リーグの歩調は合っていない。伝統球団が多く、保守的なイメージの強いセ・リーグで、その物腰の柔らかさとビジネスセンスを発揮できるか。
初の女性オーナーは「これまではわが球団のことを考えてきたけれど、球界全体に知見を生かしていければ。みなでプロ野球という一つの劇場を盛り上げていきたい」と笑顔で語った。
写真=椛本結城