週刊ベースボールONLINE

黄金時代西武スペシャル対談

田邊徳雄×デストラーデ 5連覇西武の思い出を語る

 

もし1989年、西武がリーグ優勝を果たしていたら、86年からの3連覇、90年からの5連覇と合わせて“V9”を遂げていたことになる。栄華を誇った80年代中盤から90年代中盤までの西武。その優勝を逃した89年シーズン途中にチームの一員となったデストラーデは90年から3年連続本塁打王に輝くなどチームをけん引。89年から遊撃のレギュラーに定着した田邊徳雄監督も欠かせない存在だった7月中旬、デストラーデが来日、2人に当時のチームに関して語り合ってもらった。
取材・構成=小林光男、写真=高塩隆、BBM

センターラインを中心とした守備も強力


「オーレ!」

 7月中旬、とある日の西武プリンスドーム。取材場所にデストラーデが姿を現すと、田邊徳雄監督は大声でその愛称を口にした。満面の笑みを浮かべたデストラーデ。「コドモ、デカイ?イクツ?」と流暢な日本語で田邊監督の近況を尋ねた。両者が顔を合わせるのは本当に久しぶりだという。西武に再入団したデストラーデ氏が日本を離れたのは1995年。当時は東尾修監督政権1年目だ。そこから獅子の指揮官も伊原春樹監督、伊東勤監督、渡辺久信監督、伊原監督、そして田邊監督と代を重ねた。

「ワタシ、イマ、グランドファーザーネ」

 現在53歳のデストラーデ氏には1歳になる孫がいるという。まだ外見は若々しさにあふれる“カリブの怪人”だが、時は確実に経っている。


田邊 オーレ、久しぶりだね。オーレが最後に西武のユニフォームを着てから20年も経ったのか。でも、全然太っていないし、まだプレーできるんじゃない。

デストラーデ(以下、デスト) 指名打者なら、まだプレーできるかな(笑)。ヒザがダメだから守るのは無理だけど(笑)。でも、昨日、西武のゲームをテレビで見たけど、中村(剛也)はすごいパワーだね。秋山(翔吾)も素晴らしい守備を披露していた。グッドアスリート。同じセンターフィールドだし、アキ(秋山幸二)を思い出したよ。ノリサンは彼に守備は教えているの?

田邊 オレは打撃コーチだったからね(笑)。

デスト そうか。だから、秋山はあんなにヒットを重ね、打率も3割台後半を保っているんだね。

田邊 (笑)。でもね、1989年、シーズン途中にオーレが来日したけど、そのバッティングには本当にド肝を抜かれたよ。しかも両打ちでしょ。それまで両打ちの外国人にパワフルなバッティングをするというイメージはなかった。西武で両打ちの外国人と言えばスティーブ。彼はアベレージヒッターだったからね。とにかくオーレは遠くへ飛ばすことに関しては、最初から間違いなくすごいと感じたよ。

左右両打席から圧倒的パワーで力強い打球を放ったデストラーデ



デスト ノリサンも素晴らしいショートだったよ。そのころから日本球界のスタイルも変わってきたのかな。ノリサンはメジャー・リーガーのような感じのショートだった。その逆で奈良原(浩)さんは極めて日本的なショート。まあ、とにかく捕手に伊東(勤)さん、ショートにノリサン、セカンドに辻(発彦)さん、センターにアキ。いわゆるセンターライン、英語で言えばスパイン(背骨)の守備がしっかりしていたことが、当時の西武の強さとして挙げられると思うね。守備がゲームを作ると言っても過言ではない。ファーストのキヨ(清原和博)もうまかったし、もちろんサードの石毛(宏典)さんも。確かゴールデングラブ賞を独占したこともあったんじゃないかな(92年。外野の1枠以外の8ポジションを西武の選手で占めた)。

田邊 攻守走でみんなが高みを目指していたからね。

デスト ノリサンは物静かだったけど、本当にカギを握る選手だった。打撃ではクラッチヒッター。辻さんも勝負強かったけど、得点圏にランナーがいるとすごい集中力を発揮していた記憶がある。森(祇晶)監督もその点、ノリサンを非常に認めていたと思うよ。

ショートでのダイナミックな守備、勝負強い打撃が光った田邊監督



田邊 とにかく、当時のクリーンアップのAKD(秋山、清原、デストラーデ)は強烈だった。だって、この3人は誰もが30、40本はホームランを打てる打者なんだから。オレは下位打線、特に九番に入ることが多かったけど、ランナーがいる状況で打席に入ることが多かった。

デスト そうね。誰かがランナーにいた。ワタシはフォアボールが多かったから。打率は2割6、7分台だけど、出塁率は高かった。ノリサンのヒットで何度もホームにかえったのを覚えているよ。走るのが大変だったから・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

HOT TOPICS

HOT TOPICS

球界の気になる動きを週刊ベースボール編集部がピックアップ。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング