取材・文=岡本朋祐、写真=大泉謙也 涙の銀メダルから6日後、
清宮幸太郎が“一発回答”を出した。9月12日、早実は東農大一との秋季東京都大会一次予選2回戦(多摩一本杉)を12対2の5回
コールドで快勝した。「三番・一塁」で出場した1年生は2打席連続本塁打を含む3安打5打点と、あらためてその存在感を見せた。
「日本代表のプライドじゃないですが、打たないと示しがつかない。日の丸も薄まってしまう。今までとは違った結果に、ホッとしています」

9月12日、東農大一との秋季東京都大会一次予選2回戦(多摩一本杉)で清宮は2回表一死三塁から右越え2ラン
今夏の甲子園では当時1年生だった1983年のPL学園・
桑田真澄に並ぶ2本塁打8打点。9年ぶり4強の原動力となり1年生で唯一、U-18ワールドカップに選出された。
ところが、左ヒザ違和感で1試合を欠場し、入学以来初の打撃不振。先発した全8試合で四番も、27打数6安打2打点と力の差を痛感した。「四番が打たないとこういう結果になることがあらためて分かった」と、1対2で惜敗した米国との決勝後(9月6日)、目を真っ赤にさせて言った。
清宮は帰京後、10日から練習に合流。木製から再び、金属バットに持ち替え、「リセットして」秋の初戦に臨んだ。1回表、無死走者なしからの右前打が口火となり、4点を先制。第2打席は2回表一死三塁から右越え2ラン、4回表の第3打席では一死一、二塁から右中間へ3ラン。公式戦初、練習試合を含めれば2度目の2打席連続アーチで、高校通算本塁打を早くも17本とした。
「たくさんの好投手と対戦してきた中でチェンジアップに苦労したり、内角の真っすぐを攻められたり……。決してムダにすることなく、そういう経験があるから今があるんだ、と余裕を持って打席に立てている」

4回表の第3打席では一死一、二塁から右中間へ3ランと2打席連続ホームラン
完全復調。「今までとは違った結果」とは、侍ジャパンの四番という看板を背負った自覚が背景にあった。
24ブロックある一次予選は原則、当番校の各校グラウンドで行われる。早実も会場の一つだが“清宮人気”で相手校と観衆の危険を回避するため、東京都高野連は公営球場を手配。早実は19日の3回戦(対保谷、上柚木)を突破すれば、10月10日に開幕の本大会への出場が決定する。同大会を制すと来春のセンバツ出場当確、準優勝の場合は関東5位校との比較となるのが、例年の流れだ。
この日は早朝、関東地方の広範囲で地震が起き、交通機関が乱れた。旧チームからのレギュラーは清宮と2年生の遊撃手の主将・金子銀佑のみ。ほとんどの選手が初の公式戦で、地震の影響が出た試合でも結果を出すあたり、やはり並の怪物ではない。
「今日は良いスタートが切れたが、打てない日もある。その中でチームを引っ張りたい」
仙台育英(宮城)との甲子園準決勝敗退後、涙ながらに3年生への感謝を繰り返した清宮。甲子園、侍ジャパンを経た16歳は秋になり、上級生の風格が出てきた。