寄せられている期待はプレーだけではない。今季、プロ野球人生最大のスランプに陥りながらも、代表候補に挙がったことが、何より、それを物語る。 信頼を感じさせるシーズンだった。今季から主将に就任し19年ぶりのリーグ優勝を目指したが、開幕から打撃不振に陥った。打率は2割台前半と低空飛行。現状打破すべく、昨季の打席の映像を見返しては考え、そして練習で実践――。昨季の首位打者が、もがいていた。
「今年は長打を増やそうと、キャンプから
ロングティーを多くやって、打球を飛ばそうと意識し過ぎたのかもしれない。体が反り返って、スイングも大きくなってしまっていた」
糸井の不振に加え、故障者が相次ぎ、チームは低迷。責任を取る形で6月2日には
森脇浩司監督が休養を発表すると、明るいキャラクターでチームを盛り上げる主将も表情が曇った。
「キャプテンがこんな成績やし、責任を感じる。僕のせいとちゃいますか」
それでも決して下は向かない。遠征先の宿舎では選手だけのミーティングを開き、一人ひとりに意見を求めた。その中で主将は陽気にナインを鼓舞。「ここから這い上がって優勝したら、カッコええんちゃう?」。金髪だった頭髪を黒に染め直し、言葉だけでなく、姿勢でも示した。試合ではチーム打撃を欠かさず。打率こそ.262も、チームトップの72四球を選んで、出塁率は.366をマーク。不振でも起用され続けたのは実績だけでなく、こうしたグラウンド内外の姿勢からの信頼に他ならない。その起用に応えるように復調の兆しを見せている。9月25日からの
日本ハムとの3連戦(札幌ドーム)では4安打を放った。
信頼は、チームの枠にとどまることはない。9月10日に発表されたプレミア12のロースター入り。日本を率いる
小久保裕紀監督は、
ソフトバンク、
巨人で主将を歴任し、その重責と重要性を身をもって感じている。だからこそ、糸井の高いキャプテンシーを度外視できなかったはずだ。糸井自身も、日の丸を着けて戦うことに対して、こんなコメントを残している。
「年齢とか関係なしに、チームワークが必要だと思う。引っ張っていける立場になれれば」
初対戦が多くを占める国際試合。加えて短期決戦となれば、いかなる一流選手であっても、好結果を残せる保障などない。だからこそ、プレー以外でもチームを鼓舞し、そして勢いを与えられる男が果たす役目は大きい。チームプレーを重んじる糸井。仮に苦戦を強いられた場合でも、このバットマンが世界一への道標を示してくれるに違いない。

13年のWBCは7試合で6安打を放ち、14年の日米野球では主に三番・右翼で出場。経験豊富なバットマンが果たす役割はプレー以外にもある[写真=高原由佳]