高い二塁守備力がクローズアップされることが多いが、小技を含めた打撃、そして走塁と、攻撃力も球界随一だ。そのアクロバティックなプレーで世界をかく乱し、日本を頂へと押し上げる。 
練習中からチームを盛り上げるムードメーカーの一面も。求められる役割は多彩だ/写真=川口洋邦
どの場面を切り取っても、
菊池涼介の存在は大きい。侍ジャパンのメンバーを見渡しても、菊池ほど攻守走でスピードのある選手はいない。「日本の野球は、小技だったり、スキを突くというところ。自分の持ち味をしっかり出して、チームに貢献できるように頑張ります」。大柄な選手が多く、アバウトな戦術の多い外国チームを相手に取れば、菊池の存在価値は倍以上に跳ね上がる。必ずなくてはならない存在になる。
小久保裕紀監督はすでに
山田哲人を二塁か指名打者で起用することを明言している。2月上旬の各球団へのキャンプ地視察で菊池と山田について「状態のいいほうをしっかり使おうと思う。(山田の指名打者も)あります」。だが直後に菊池のサード起用を含め「2人同時に出す方法はないかも考える」と付け加えた。山田が2年連続トリプルスリーなら、菊池は2016年に181安打で最多安打を獲得。犠打もリーグ最多と、二番打者として文句のつけようのない働きをした。昨年11月の強化試合オランダ戦でも二番に入り、第1打席で意表を突くセーフティーバント。二盗も決めた。中軸へのつなぎの役としては抜群だけに、指揮官の頭を悩ませることになる。
サードでの起用プランも持ち上がるなか、セカンドで4年連続ゴールデン・グラブ賞を受賞、歴代の補殺記録のベスト3を独占している菊池にはこだわりはない。
広島のキャンプでサードやショートの守備でノックを受けるなど、ただ準備を進めてきた。
「僕は言われたところで。シーズン中でもサードでノックを受けている。強化試合でもショートに入らせてもらった。自分のなかではそんなにかな、と思います」
昨年11月の強化試合では途中からショートに入った。打球処理こそなかったが、サインプレーを確実にこなした。もともとショートとしてプロをスタートさせているだけに、大きな不安はない。キャンプ中のサード守備でも球団関係者から「どこを守らせてもキクはうまい」と評価されるなど、高いレベルでこなしていた。例え守備固め要員となったとしても、これ以上頼れる存在はいないだろう。
走ることに関しても、12球団トップクラスのポテンシャルを持つ。コリジョンルールが制定された昨季、菊池は捕手の隙間をかいくぐり続けた。左手1本でベースにさわったり、回り込んだり、避けたり……。それは“忍者走塁”と呼ばれ、広島の優勝にも大きく貢献した。そしてスライディング技術もさることながら、ランの技術も高い。ヒザが強く、走路が膨らまない。トップスピードに乗る時間も短く、一塁から本塁に生還する
ロングランも得意とする。強化試合でもロングランを決め「チームでもやっていることだし、外国人は肩は強いけど動きはゆっくりなので」と話していた。高い走塁技術と積極性は、
鈴木誠也とともに広島から持っていくことのできる武器の1つになる。
明るさとコミュニケーションも忘れてはならない菊池の大きな武器だ。同学年の
中田翔はもちろん、主砲を張ることが予想される
筒香嘉智ら後輩とも、隔てなく接する。チーム一丸の旗印のもとにおいても、大きな役割を果たすことは間違いない。文字どおり、どんな状況での起用も想定される。だが一貫して言う。
「勝利に貢献できるように。本当にそれだけです」
スーパーサブでも構わない。むしろ自分の力で、チームに貢献できるのならどんな役でも買って出る。日本野球を体現する男が世界を相手にも長所をいかんなく発揮する。いぶし銀の働きが、日本を頂点に押し上げる。

小久保ジャパン選出は5度目。欠かせない主力メンバーだ/写真=高原由佳
PROFILE きくち・りょうすけ●1990年3月11日生まれ。東京都出身。171cm72kg。右投右打。武蔵工大二高から中京学院大を経て2012年ドラフト2位で広島入団。高い守備力を武器に13年に二塁のレギュラーを獲得すると、同年から4年連続でゴールデン。グラブ賞を受賞。16年は最多安打も獲得し、25年ぶりのリーグ優勝に貢献した。