
捕手として、新キャプテンとしてエース雪山を盛り立てる
9月22日、
清宮幸太郎が「進路表明会見」で理想とする選手を問われ、早実のレジェンドである
王貞治(現
ソフトバンク球団会長)と答えた。清宮は高校通算本塁打で最多とされる111本を放ったが、具体的な数字について言及することをあまり好まなかった。だが、プロでの目標を「868」とキッパリ。今夏まで三番・清宮の後を打ってきた
野村大樹も今年1月、センバツ個人アンケートの「尊敬する人物」として、偉大な大先輩の名前を記入した。今秋の東京大会が開幕した段階で高校通算48本塁打。先輩・清宮を継ぎ、一発で流れを変えられる大砲だ。
「世界の本塁打王ですし、(目標が)高すぎるかもしれませんが、近づけるようにしていきたい」
兵庫県出身の野村が、東京の早実を目指したのは11年前の夏だ。2006年8月21日、早実と駒大苫小牧の決勝再試合を一塁内野席で観戦。当時5歳だった。「偶然、親戚からチケットをいただいたんです。初めて見た高校野球。斎藤さんが奪った9回最後の空振り三振、得点シーンもよく覚えています」。最後の打者となった
田中将大(現
ヤンキース)も兵庫出身だが、大志を抱いて北海道の高校へ進学し、素材を大きく開花させた。野村もエンジとWASEDAのユニフォームに、夢と希望を持った。
学力優秀の野村は、同志社中へ進学。片道2時間以上の通学時間も、勉強に費やしたというから驚きだ。「関学(関西学院中学部)の選択肢もあったんですが、土曜日にも授業があるので、満足に野球ができない」。平日は学業に専念し、週末は大阪福島シニアでプレー。侍ジャパンU-15代表では四番を務め、
小園海斗(報徳学園高)らと日の丸を背負った。同志社高、同大へと進学するのが通常の流れも、早実志望は不変。父・大地さんからも「野球を続けたいなら早慶へ行け!」と言われていた。推薦入試で早実に入学した。
2回戦で敗退した1年春の都大会後から四番・三塁。三番・清宮の後を打つことは、特別な思いがあった。
「緊張はしますけど、やりがいがありますし、日本で一番難しい打順で、誇りに思います」
象徴的なシーンは1年秋の日大三高との東京大会決勝だ。清宮は左腕・
櫻井周斗に合わず、屈辱の5打席連続三振。2点差を追いついた9回一死二塁。野村はスライダーを狙い、初球を右翼席へサヨナラ2ラン。“勝負勘”が際立っていた。
2年夏からは中学時代に守った捕手転向。好きな選手は
西武・
森友哉。右と左でこそ違うが、小柄ながら攻撃的なスタイルにあこがれる。同夏は西東京大会決勝(対東海大菅生高)で敗退。捕手の難しさを痛感したが、主将となった今秋に生かしている。新チームでは三番を任され「夏まではホームランを意識していたが、つなぐ打撃を心掛けている」と、チーム第一の清宮の影響を受けている。
6月16日、侍ジャパンU-18代表の第1次候補30人に入ったが、最終20人からは漏れた。2年生で日の丸を背負った小園とは親交が続いており、大阪桐蔭高・
藤原恭大も「野村と一緒にプレーしたかった」と、トップ選手からも認められた存在だ。
野村は一人っ子。入学以来、母・恵美子さんと都内で生活している。
「ビーフシチューが大好物(笑)。量、栄養面も考えてくれて、感謝です。父は宝塚で一人でご飯を作って、寂しい思いをさせている。家族の協力なしに自分は野球ができない。活躍しないと、合わせる顔もありません」
入学の背景、家庭環境からも大学進学が有力だ。あるNPBスカウトは「しっかり、見て行きます」と、強打捕手を高く評価。センバツアンケートの「将来の夢」には「プロ野球選手」と力強い文字。清宮の進路表明会見を受け、野村は「プロ志望届を提出した選手の後ろを打ったのは自信になる。いつかは一緒にやりたい」と、慎重に言葉を選んだ。先輩がそうであったように、まずは、主将として目の前の戦いに集中する。

新チームでは三番を任され、つなぐ打撃を心掛けている
PERSONAL CHECK
右方向への鋭い打球、スタンドインも可能であることから、1年時からNPBスカウトは目を光らせている。2年春の関東大会を前に捕手に転向。クレバーな選手で研究熱心でもあり、強打捕手の可能性はどんどん広がる。
50m走 6.4秒 遠投 100m 打力 4.5 守備力 3.5 走力 3 メンタル 4.5 将来性 5 合計 20.5 ※各項目(打力、守備力、走力、メンタル、将来性)は5点満点 PROFILE のむら・だいじゅ●2000年9月10日生まれ。兵庫県出身。172cm82kg。右投右打。宝塚小1年時に末広ルーキーズで野球を始め、4年時以降はブルーボンバーズに在籍。同志社中時代は大阪福島シニアに在籍し(2年まで三塁で3年から捕手)全国大会3位、ジャイアンツカップ16強。打率.730、28本塁打。侍ジャパンU-15代表では四番を務め、アジアチャレンジマッチ2015で優勝。早実では1年春の都大会後から四番を任され、2年春のセンバツ出場。同夏は西東京大会準優勝。新チームから主将を務める。
取材・文=岡本朋祐、写真=矢野寿明 ※ベースボール・マガジン12月号より転載