オフだからこそ来年のシーズンに向けて野球のいろいろな話を仲間たちとしたいところだ。その話の輪が自然と広がる店を紹介する新連載企画、まさに「野球好きが集う店」だけを厳選した。第1回は元甲子園優勝球児が店長を務める東京都内茅場町の焼き肉店。「ここから」を紹介しよう。 取材・構成=椎屋博幸、写真=小山真司 
名門校の元選手たちから提供された実着用のユニフォームがずらり
焼き肉の美味しそうな匂いに誘われ、ドアを開くと右手のカベにずらりと並んだ高校野球名門校のユニフォームが目に入ってくる。野球好きの集まる店にプロ野球チームのユニフォームが飾られることは多いが、ここは高校野球のものが圧倒的に多い。まさに、一瞬にして甲子園に来たような雰囲気に包まれる。
店長の沖田浩之さんは、将来の夢として、ユニフォームを飾った飲食店を持ちたいと思っていた。「沖田浩之」という名前だけで、ピンとくる読者は、相当な高校野球ファンだ。沖田さんは高知県の名門・明徳義塾高野球部の出身。2002年に夏の甲子園を制覇したメンバー(2年生)で、3年生時には主将を務め、2年連続で高校日本代表にも選出されたという選手だ。
その後は亜大野球部に進み、大学卒業後は社会人で野球を続けた。そして約4年前に一線から退いたそのときに出会ったのが「ここから」を手掛ける株式会社ISSEIの社長だ。その社長も明徳義塾高の野球部の先輩。最初は人形町店でキッチンを任された。そこで店長と社長の許可を得て、高校時代に着用していた明徳義塾高のユニフォームを飾った。

明徳義塾高の1つ上の先輩・森岡良介[ヤクルトコーチ]のユニフォームは大事に額縁に入れて飾られている
その後17年8月に茅場町店に転勤となり、昨年の12月に店長へ。異動後すぐにユニフォームを飾り、高校時代のライバルたちから名門校のユニフォームを提供してもらうなどいつの間にか数が増えていった。
「お客様の中には『この店で誰か甲子園に出たことがある人がいるの?』と聞かれます。そのときは私が……と。すると●●選手知っている? と聞かれることもあります」。小中学生時代、地元で対戦した選手などとつながっているお客さんもおり、そこで話が盛り上がるという。
トイレには全国大会時の集合写真と、入場行進のときの写真が飾ってある。ある日、トイレから出てきた女性客が「ここに明徳の野球部の方がいるんですか?」と聞いてきた。話を聞くと、当時この入場行進のとき明徳義塾高のプラカードを持った女性だった。まさかの展開に沖田さんもビックリしたという。
もちろん、明徳義塾高の馬淵史郎監督も東京に来る際には顔を出すという。プロアマ関係なく高校、亜大の先輩や後輩も顔を出してくれる。さらに、高校野球ファンで他県から沖田さんに会いにくるファンも。
「野球のボール一つで、いろいろな人とつながっていくんです。野球の話をしながら輪が広がっていく。野球をやっていてよかったな、と思いますし、自分が夢見た状況になっているのはうれしいです」
焼き肉の味についての紹介を忘れていたが、もちろんすべてにおいて絶品。店内のいたるところから聞こえてくる野球談議を聞きながら、焼き肉に舌鼓を打つのもいいだろう。そしていつしかあなたも野球談議の輪の中に入っているかもしれない。

どのメニューも肉厚でジューシー

元有名高校球児の店長だけに、プロ野球選手たちもお店で美味しいお肉に舌鼓
沖田店長の一押しメニュー!

伝説盛り 4980円
「ここから」の看板メニューと言っていい。各テーブルで必ず「伝説盛り1つ」の声が聞こえる。厚く切られたタン2枚、ハラミ2枚、ヒレ1枚が1セット。お店の方が焼いてくれて、取り分けてくれる。タンはレアではしっとり、焼けるとプリプリ。ハラミは厚いのに、とにかく柔らかくジューシー。ヒレは最後に店長が切り分けて、特製のタレとガーリックチップを乗せて再登場。こちらも「噛んだ?」というくらいアッという間になくなる柔らかさだ。「ここから」に行ったらぜひ、ご堪能ください。

店の近くの交差点には「ここから15歩」という看板もある
焼肉『ここから』茅場町店 住所 東京都中央区日本橋茅場町1-8-5 K.K..ビル1F
TEL 050-5571-4815
営業時間【平日】17時〜24時(23時LO)【土日祝】17時〜23時(22時LO)
定休日 無休(年末年始)
座席数 32席
アクセス 東京メトロ日比谷線/東西線 茅場町駅5番、6番出口より徒歩1分