
巨人で芽が出ず、17年から移籍した日本ハムで覚醒を遂げた大田
今はわれわれの常識が通用しない時代になった。
小宮山悟(元
ロッテほか)が早大監督に就任した。低迷が続く早大の再建を成し遂げてほしい。小宮山はそれができる男だ。トレードマークのヒゲも剃って覚悟を示した。だからこそ私は、ある早大OBに「一丸となって小宮山監督をバックアップしてほしい。考え方がバラバラでは困る」と言った。ところが、そのOBによると今の学生の中には「4年間早大の野球部に所属したら就職で有利になる」と、損得勘定しかできない人間が少なからずいるという。何を言っているのか。私には理解できない。勝負に4年間のすべてを費やすべきではないのか。
私は反駁(はんばく)した。「早稲田ブランドをカサに着て、中途半端に野球をやるヤツは、
豊田泰光流にいえばオレが許さん。4年間もかけて努力も何もしないような人間はクビにしろ」。すると件(くだん)のOBは「そんなことはできません。それができたら楽です」と。そこをやれと、あえて言いたい。
本当にいまの日本は狂っている。しかし、逆に言えばチャンスなのだ。正論が際立つ。ただ、悲しいかな正論を述べる人間がいない。なぜか。嫌われることが怖いからだ。
確かに理解してもらうためには10年かかるかもしれない。しかし、どんなに歳月を要してでも正論は言い続けるべきだ。
そこで書きたい。今オフも巨人は他球団で育ったスター選手を次から次へと獲得した。たとえば、前
オリックスの
中島宏之。本当にオリックスが必要としているのなら放さない。放出するのはどこかに欠点があるということだ。
炭谷銀仁朗しかり。その銀仁朗に1億5000万円もの年俸を支払う巨人。FAで獲得した
丸佳浩は4億5000万円だという。しかも複数年の5年契約。人間は楽をしたい生き物だ。破格の好条件を提示したから無条件に働く、と思ったら大間違いである。
落合博満は3回三冠王に就くことで初めて3億をもらった。その落合以上に値打ちのある人間が現在の球界にいたら教えてほしい。
時代は違うが、私の現役時代には選手の年俸は最高で5000万円が相場だった。私が3000万円で、ライバルと見られていた
阪神・
吉田義男はもっともらっていた。あんなヤツに負けてたまるか。これを原動力に必死に頑張った結果、なんとか成績を残して5000万円にアップ。カネというのは結果としてついてくるべきものだ。“最初にカネありき”、この考えには賛同できない。もちろん、プロの評価は金額であるとの考えを否定はしない。しかし、カネ以上に大切なものがある。そういうことを想像できる感性がないようでは、待っているのは堕落だけだ。
いまの人は育てるということを知らない。育てていないから巨人はドラフト1位で獲得した選手、例えば
大田泰示を平気で他球団にやってしまう。その大田が日本ハムに行って水を得た魚のように活躍しているのだ。何をかいわんや、である。
野球界の繁栄のために、こうすべきだ──それを私は書き続けていく。人気取りのために迎合する気はない。ということで、賢明なる読者諸兄には今年も私の連載にお付き合い願いたい。謹賀新年。
PROFILE 廣岡達朗/ひろおか・たつろう●1932年2月9日生まれ。
広島県出身。呉三津田高、早大を経て54年に巨人入団。大型遊撃手として新人王に輝くなど活躍。66年に引退。広島、
ヤクルトのコーチを経て76年シーズン途中にヤクルト監督に就任。78年、球団初のリーグ制覇、日本一に導く。82年の
西武監督就任1年目から2年連続日本一。4年間で3度優勝という偉業を残し85年限りで退任。92年野球殿堂入り。