
強肩が持ち味。進路が注目される
現実路線を歩んできた野球人生である。
藤野隼大は3年秋のシーズン終了を一つの区切りとして、卒業後の進路について考えるつもりでいた。
しかし、明確な結論は出なかった。
「(大学)ジャパンにも選ばれて、周りからも『(プロに)行けるよ』と言われますが、自分の中ではまだ、手応えがないんです。仮にこのまま行けたとしても、成功しないのでは、と。自分の中で本気でやっていけるという現実味を持てれば、プロ野球を目指したいと思います」
経済学部に在籍する藤野はすでに、4年春までには卒業単位を取得できる計算にあるという。ゼミではマーケティングを専攻。学業、野球におけるエリートは「野球以外の道もあるかな」と、デベロッパー、広告業界にも興味を抱いていた。ただ昨夏、一つに絞られた。侍ジャパン大学代表に初めて選出され、心を決めた。
「ここまで野球をやらせていただいて、行けるところまではプレーしよう、と」。つまり、大学卒業後の野球継続希望を打ち出したのである。
しかし、昨秋、藤野は大きな壁に直面する。初めて日の丸を背負い、日米大学選手権(米国)とハーレム・ベースボールウイーク(オランダ)に出場。約1カ月に及ぶ海外遠征は貴重な経験となったが、その一方で調整法の難しさを味わっている。
昨秋は打率.195、2打点とクリーンアップとしては寂しい数字が並んだ。投手陣をけん引する捕手としても3季連続で優勝へ導くことができず、悔しいシーズンを過ごした。2年春に定位置を奪取した藤野は同春に35季ぶりのリーグ優勝、大学選秋には4本塁打を放って初のベストナインを受賞すると、3年春も3季連続で打率3割超えを果たし、人生で初めて日の丸を背負った。ディフェンス面では好投手を受ける中で貴重な経験を積んだが、打撃面では変則フォームで、ボールが手元で動く外国人投手にフォームを崩され、帰国後の1カ月でも修正できなかった。
「あまりに順調、とんとん拍子できていましたが、ここで一度、自分を見つめ直す良い機会になった。それが(プロ志望と)言い切れない要因でもあります。社会人野球を選ぶにしても、人生がかかっているので、慎重に見極めたい」
11月の新チームから主将に就任し、新たな責任が芽生えたことも心の充実につながっている。
二塁送球1.85秒の強肩で、大きな故障と無縁なのも魅力だ。「常にボールに触っていられるポジションで、展開に絡んでいける。天職のような感じです」と、小学校5年時からの“定位置”に誇りを持っている。「打てる大型捕手」として、
城島健司(元
ソフトバンクほか)を目指す。
「プロ野球には高校でスポーツ推薦、大学もスポーツ推薦で入学するような人が行くものだと思っていました。自分は、高校は一般入試、大学も自由選抜入試(自己推薦)で入学。そういう選手でも、プロや社会人の道を目指せる。これから大学を目指す選手にも、あきらめないことの動機づけになってくれれば、うれしく思います」
しっかり現実を見極めた上で、4年春にもう一つの“決断”を下す。
PERSONAL CHECK
50メートル走 6.4秒 遠投 100メートル 
藤野の出身校・川越東高は埼玉県屈指の私学の進学校だ。昨秋、6勝を挙げてベストナインの慶大の左腕・高橋佑樹、早大の主力打者・福岡高輝と同リーグで切磋琢磨している。
PROFILE ふじの・はやた●1998年1月7日生まれ。埼玉県出身。181cm83kg。右投右打。東原小2年時から大井少年ファイターズで野球を始め投手、三塁手らを経験して5年時から捕手。大井中時代は上福岡シニアに在籍。川越東高では1年秋からベンチ入りし2年秋からレギュラー。同秋に関東大会8強、3年春の関東大会準優勝。立大では2年春に定位置を獲得し、35季ぶりのリーグ優勝、59年ぶりの大学日本一に貢献。同秋にベストナイン受賞。昨夏は大学日本代表でプレーし日米大学選手権、ハーレム・ベースボールウイークに出場。東京六大学リーグ通算51試合、打率.305、6本塁打、22打点。
取材・文=岡本朋祐 ベースボールマガジン1月号より転載