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[クローズアップ]2020後半戦 巻き返しを誓う男たち

球界の「半沢直樹」たちが叫ぶ!「倍返しだ!」

 

大人気ドラマ「半沢直樹」。その決め台詞が「倍返しだ!」。積もり積もったいら立ち、怒りを爆発させての、すかっと爽やかの大逆転劇。今回は後半戦に“倍返し”を期す男たちを紹介しよう。

写真=井沢雄一郎


 シーズンも折り返し地点を迎えた。予想の結果を出し、充実感あふれる選手がいれば、故障や不振続きで、唇をかみ締める選手もいる。

 ただし、この世界、昨日の実績は必ずしも明日の保証にはならない。今に満足し、立ち止まった者に成長はない。そして、自分の結果だけではなく、チームが勝たなければ、報われない世界でもある。だからみんな必死に練習をする。必死にプレーをする。必死に仲間たちを応援する。

 大きな壁にぶち当たりながらも、逃げたり、あきらめたりすることなく、真っ正面から乗り越えようとしている球界の「半沢直樹たち」を紹介しよう。


楽天・松井裕樹 先発でもギラつきが戻った!


 開幕から、もがき苦しんだ。

 昨季の最多セーブ、通算139セーブの犬鷲の絶対的守護神は今季から先発に再転向。開幕先発ローテ入りも、6月の2試合はいずれも5回を投げ切れず防御率5.19と低迷し、二軍降格を命じられた。さらには二軍戦でも4回8失点と大炎上することも……。

 再調整は約1カ月に及んだ。8月6日に一軍の先発ローテ復帰も、3試合連続で白星をつかめず(記録上は1敗)。それでも20日の日本ハム戦(札幌ドーム)では「体重移動とテークバックがハマるようになった」と復調の手応えはあった。

 そして今季6試合目の先発登板で、ようやく初勝利。8月27日のロッテ戦(楽天生命パーク)、今季最長となる7回を投げ切り、1安打無失点、11奪三振の快投だった。

「やっぱりうれしい。ホッとしました」と安どの表情で振り返った左腕。本拠地での先発勝利は2014年9月16日のロッテ戦(コボスタ宮城)以来、実に2172日ぶりだった。

 ウイニングボールは妻と5月に生まれた長女に届けたが、「1個じゃ足りない」ときっぱり。先発マウンドで、躍動感と目のギラつきが戻った左腕が、“倍返し”へと腕を撫す。

日本ハム・中田翔 今年の俺は“レべチ”だ!


写真=小山真司


 ポテンシャルの高さは誰もが認める。二度の打点王の実績もある。ただ、これまで周囲の期待に十分応えているとは言えない。16年の日本一を最後にチームは優勝争いに加わることもできず、不動の四番と言われた男もまた、苦しみ抜いた。

 しかし今季、その背中がひとまわりも、ふたまわりも大きく見える。8月22日の楽天戦(札幌ドーム)で両リーグ最速の20号アーチ。通算8度目の20号到達は球団(前身の東映時代を含む)では13度の張本勲、同じく8度の大杉勝男しかおらず、時代を彩ったレジェンドたちに堂々と肩を並べた。

 開幕から口にする「今年はレベチ(レベルが違う)だね」と手応えを感じているバッティング。詳細は明かしていないが、明らかに変わったのは打撃フォームだ。昨年までの左足を高く上げる打ち方から、ミートに重きを置いたオーソドックスなフォームに変更。さらに打つ際の右ヒジの使い方も微調整。結果スイングに鋭さが増し、追い込まれても簡単に三振する場面も激減した。「力んで失敗してきたので、今は8割程度の力で振っているイメージ。それでもボールは飛んでくれる」とこれまでにない新たな感覚を自分のものにしつつある。

 本人が一番こだわる打点に直結する得点圏打率も、昨年の.219から.286にまで上昇。本塁打と打点で2冠に立つ北の四番は、“倍返し”を果たし、パの打撃タイトルを必ずつかむ。

西武・山川穂高 絶対に逆転してやる!


写真=小山真司


 ファンが、この男の“倍返し”を待っている。8月28日の楽天戦(楽天生命パーク)は、今季の西武を象徴するかのようなゲームだった。打線は楽天4投手の前に5安打に抑えられて1対2と惜敗。四番の山川穂高も3三振と結果が出なかった。前日の日本ハム戦(メットライフ)。9回一死満塁から山川が逆転サヨナラ打を放ち、連敗を5でストップ。この劇打にスタメンを外れ、自分がマスクをかぶった途端、逆転を許した森友哉が号泣する姿は見る者の心を打った。「苦しい展開こそ助け合う。今日のゲームは大きかった」と山川も手応えを感じたが、勢いをつなげられない。

 8月30日現在5位。簡単に追いつける差ではない。それでも「残り半分あるので、大逆転したい」。お立ち台で宣言した言葉を実現するためには、自らがバットで“倍返し”し続ける必要がある。

ソフトバンク・千賀滉大 エースの意地を見せる!


写真=湯浅芳昭


 鷹の剛腕の“倍返し”が始まった。

 8月25日のオリックス戦(PayPayドーム)、今季自己最長の7回を投げ無失点に抑えた。魂のこもった投球は、エースが見せた意地だ。ケガの影響で6月開幕にも間に合わない状況から、復帰したのは7月7日。そこから4勝を挙げるも、失点を重ねる投球内容はふがいないものだった。8月11日にはエラーをきっかけに6失点。柳田悠岐の「悪いのは千賀」の言葉はエラーした川瀬晃への気配りだけではない。「お前は、エースだろ!」という強烈な檄だった。確かにチーム状況もあって、当初の予定より前倒しの復帰。しかし、エースである以上、そこを言い訳にはできない。苦しみながらも、前を向くしかなかった。だからこそ、今季初めて最低限の仕事ができた8月25日、お立ち台で言葉を詰まらせた。そして、「やらなくちゃいけない」。まだ本調子ではない。それでも、エースの名に恥じぬよう全身全霊で戦っていく。

阪神・藤浪晋太郎 目指すは“10倍返し”だ!


写真=前島進


 長く苦しい日々が続いた。限界説、移籍のウワサ……かつての若きエースは、これでもかとたたかれ続けた。

 自律神経を乱すなど、精神的に追い詰められた日々もあったが、投球フォームを見つめ直し、徐々に一番良いときの自分を取り戻す。今季は常時150キロを超える真っすぐに高速スライダー、チェンジアップを駆使し14勝を挙げ、221三振を奪った2015年のころのような投球がよみがえってきた。打線とかみ合わず、勝利が遠かったが、それでも8月21日のヤクルト戦(神宮)で692日ぶりに白星。「すごい拍手をもらいましたし、次また頑張ろうと」と笑顔。29日の広島戦(マツダ広島)戦では4回2/3で降板し2勝目は逃した。5回に突然、制球が乱れ、最後は右打者への死球と嫌な終わり方だったが、それまでの投球は力強い。次登板から白星を積み重ね、“倍返し”、いや“10倍返し”をする。

中日・大野雄大 着々と進む“倍返し”!


写真=小山真司


 開幕投手を務めながら、6試合連続で白星なし。その時点での成績は0勝3敗、防御率は4.04だった。未勝利に終わった2年前の悪夢が思い出されたが、大野雄は落ち着いていた。調子は決して悪くはない。打線の援護が少なかったのも事実。ただ勝ち星が遠かった。心に火が付いたのはベテラン勢の言葉。山井大介藤井淳志から「もっと長いイニングを投げるべきだ」とハッパをかけられた。それは大野雄自身が一番よく分かっていることだった。

 開幕から7試合目の登板となる7月31日のヤクルト戦(ナゴヤドーム)で待望の今季初勝利。3失点も最後まで一人で投げ抜いた。そしてこれだけでは足りないとばかりに、続く8月7、16日の巨人戦2試合にも連続完投勝利。すると23日のDeNA戦(ナゴヤドーム)は今季初完封で4試合連続完投に花を添えた。

「これぞエース。安心して見ていられるし、安定した投球が続いていて本当に頼もしい」と与田剛監督も手放しで褒め称えた。竜のエースの“倍返し”は、まだまだ終わらない。
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