アマ時代の指導者が教え子の思い出を振り返る連載企画。今回は大学時代に連盟記録に「1」と迫る122安打をマークし、19年にドラフト1位で楽天に入団した辰己涼介だ。立命大時代の恩師、後藤昇監督に当時の話を聞いた。 取材・構成=富田庸 写真=BBM 彼のポテンシャルからすれば守備・走塁面では、プロですぐにでもレギュラーのレベルでやっていけるだろうという推測はできました。ただ、バッティングは苦しむだろうなと見ていましたし、実際に苦しんでいる印象はありますね。
昨季は開幕戦で一番打者として初球先頭打者本塁打。独特な感性の持ち主で、そういった場面でホームランを“打ててしまう”。ただ、彼本来の役割というものが、そのホームランによってかき消されてしまっているとも感じています。出塁を追求するならば、もっとスイングをコンパクトにできるはずですから。現状ではどっちつかずの印象ですし、本人もジレンマを感じているのかもしれません。今後、打率や出塁率を求めていくのか、それとも打点など華やかなところを目指していくのか。求める選手像によって、彼の存在意義も変わってくるはずです。
私が立命大の監督に就任したのが、ちょうど彼が入学してくる2015年。だから入学前の彼のプレーは見ていないんです。2月に新1年生が大学の練習に合流したのですが、プレーを見た瞬間にとんでもない逸材であることが分かりました。4月のリーグ戦で彼をスタメンで起用するのかどうか、その作業からスタートしました。結果的には、開幕して1カ月くらいして、選手の勢いが落ちてきたころにカンフル剤として投入するというプランに落ち着きました。
まず目を引いたのがスピードです。7、8割程度、軽く走っているように見えて、たたき出すタイムはチーム内で断然トップ。外野からの返球も、カットマンいらずの強肩を持っている。休みの日でも勝手にバットを振っているような練習の虫。年ごろですから、ほかの子はデートだ、遊びだと流されるのですが(笑)、彼はまったくぶれない。野球と向き合う姿勢は誰にも負けませんでした。
デビュー戦となったのは予定どおり開幕1カ月後のゴールデンウィーク前でした。関大との1回戦で左中間へ二塁打を放つと、翌日の2回戦では・・・
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