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廣岡達朗連載「やれ」と言える信念

廣岡達朗コラム「巨人の投手が育たないのは捕手が生かしていないのだ」

 


 阪神にマジックが点灯しているが、それは巨人が弱いからだ。

 私から見ると、勝ち方というのを知らない。やはり勝敗を左右するのは投手である。にもかかわらず巨人は原辰徳監督が若手好きで、新人に毛の生えたような投手を使いたがる。あれで勝とうというのはナンセンスだ。

 巨人の投手が育たないのはなぜか。捕手が生かしていないのだ。原監督は大城卓三を打撃が良いという理由だけで先発オーダーで使う。忘れたころに岸田行倫を先発マスクに起用。やっていることに意味がないのだ。

 投手との相性の良さだけで捕手を使うのは間違い。投手を育てられるかどうかという視点で捕手は使うべきだ。

 結局、小林誠司がベンチウォーマーに甘んじていることが巨人の問題を象徴している。小林の打力が弱いというなら教えればいいではないか。ティー一つにもいろいろなやり方がある。それができていない。教わっていない小林が将来指導者になって何を教えるというのか。

 今の捕手を見ていて疑問に思うのは、捕球後の投手への返球がぞんざいなことだ。骨折で離脱した阪神・梅野隆太郎しかり。ヤクルト中村悠平もそうだ。「良い球を放った。頑張れ」という思いで球を返す姿勢が全然見えない。投手も人間だから、この人(捕手)は俺のために一生懸命に受けてくれているかどうかは本能的に分かるのだ。日常生活でも、窓を閉めるときに気持ちをこめて丁寧にやれば、スムーズに閉まる。人も物も同じことだ。

 話を巨人に戻すと、相変わらずの一発頼みで簡単に1点を取りにいく野球をしている。最近はクリーンアップにもバントをやらせているが、根拠も何も感じない。ただ「バントもやらせています」というポーズにしか私には見えない。もっと1点を大切にする野球をやるべきだ。

 8月16日、中日戦(バンテリン)での原監督のリクエストには開いた口が塞がらなかった。3回表二死一、二塁の場面で坂本勇人がサードゴロ。三塁手が処理して二塁封殺の判定が際どかったため、リプレイ検証を要求したが、仮にセーフだったとしても二塁手は一塁へ転送していて楽にアウトになっていた。リクエストの意味はどこにあるのか。審判がこれを真に受けて一旦下がったのも情けない。

 対広島3連戦では左中間のフライに対してセンターとレフトが激突したかと思えば、翌日にはお見合い。どちらに優先権があるかということをコーチが指導していない証拠だ。優先権はセンターにある。センターが落下地点に入るのが遅れてもダッシュをかけてきたらレフトがよけるのが当然。選手の責任というより、そういうことを教えていない首脳陣がだらしないのだ。

 巨人に限らず、野手の捕球ミス、悪送球は当たり前のように見られる。慣れというのが一番怖い。車の運転に慣れているからといって片手ハンドルで集中力を欠いて運転していたら、「あっ」と思った瞬間には取り返しのつかない事故を起こすケースがある。こういう緊張感を常に持って打球と向き合うべきである。

 今後の見どころを占うと、優勝を目指すチームはすべてに前向きだ。Bクラスのチームは優勝に関係ないとなればCクラスの内容の野球をやる。それではいけない。Bクラスでも「来年を見てろよ」という気で鍛えていれば、優勝争いから脱落し希望を失った上位チームをひっくり返せる。私は監督時代に「頑張ってやっていれば必ず来年につながる。気を抜くな」とハッパをかけた。そのとおりになった。

 物事の結果には原因がある。その原因は自分自身が作っていると思えば、野球界はもっと良くなるのだ。

PROFILE
廣岡達朗/ひろおか・たつろう●1932年2月9日生まれ。広島県出身。呉三津田高、早大を経て54年に巨人入団。大型遊撃手として新人王に輝くなど活躍。66年に引退。広島、ヤクルトのコーチを経て76年シーズン途中にヤクルト監督に就任。78年、球団初のリーグ制覇、日本一に導く。82年の西武監督就任1年目から2年連続日本一。4年間で3度優勝という偉業を残し85年限りで退団。92年野球殿堂入り。
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