恐れていたことが起きてしまった……。開幕から打線をけん引していた主砲・柳田悠岐が試合中のケガで長期離脱。ただ、いつまでも引きずってはいられない。4年ぶりのV奪還に向けて、チームはますます一つになる。 5月31日の広島戦[みずほPayPay]の3回、走塁時に右太もも裏を痛めた柳田は、ヘッドスライディング後、そのまま仰向けで動けず
本拠地・みずほPayPayドームの空気が一変した。5月31日に行われた広島との交流戦、3回のことだった。
一死から打席に入った柳田悠岐は初球を二ゴロ。ヘッドスライディングするもアウトになった。ただ、様子が明らかにおかしい。そのまま倒れ込み、苦悶の表情を浮かべ、自力では歩くことができず。トレーナーらに肩を抱えられてベンチに戻った。この日は指名打者での起用だったため、5回の次打席で代打が告げられ、途中交代となった。
試合後、取材に応じた柳田の右脚患部にはテーピングが巻かれていた。負傷したのは走塁中だといい、「痛かったです」。走り続けることが困難ゆえのヘッドスライディングだった。
翌6月1日の広島戦後に球団から発表された診断結果は「右半腱様筋損傷」。全治はおよそ4カ月とのことだった。すなわち、レギュラーシーズン中の復帰は絶望的だ。
今季も開幕からリーグ上位を争う打撃成績を収めてきた主砲を欠き、今後の戦いは想像以上に厳しいものになる。ただ、柳田の負傷直後から、
小久保裕紀監督は「こうなったときにどう立て直すか」へ舵を切った。そして、「そういうときこそ、チームの底力の見せどころ」と力を込めた。選手たちに向けては、6月1日の試合前にゲキを飛ばしたという。
「柳田の穴を埋めようとは考えなくていい。個々がプロフェッショナルなので(として)、替えの効かない選手になりなさい」
一人ひとりがやるべきことを、しっかりやる。これまでと変わらない姿勢を強調して求めた。
もちろん、チームとしての対応策も講じている。その一つが、
佐藤直樹の支配下登録。昨季限りで戦力外となり育成選手として再契約していた2020年ドラフト1位外野手を急遽、6月1日に再昇格させた。
柳田のケガを受け、すぐさま佐藤直[写真]の支配下再昇格に踏み切った。佐藤直は遠征先の関西から始発で福岡入り
同日の試合は即一番・中堅でスタメン起用された佐藤直が攻守走の活躍で、2対0で勝利した。2日の同カードは9回二死から同点3ランで追いつかれるも、延長10回に
近藤健介が同じく二死からサヨナラ2ランを放って劇的勝利。ヒーローインタビューでは近藤が「一番悔しいのはギータさん(柳田)。帰ってきたときにいい順位にいて、また暴れてもらえるような舞台を整えながら待っていたいなと思います」と、みんなの思いを代弁した。
大丈夫、チームは同じ方向を向いている。そこに柳田の思いもプラスして――。必ずや、頂点に立つ。