第106回全国高校野球選手権(8月7日開幕)の舞台、阪神甲子園球場は今年で誕生100周年。高校野球の歴史は、懸命に白球を追った球児たちの足跡であり、その躍動を応援で後押しした人々の青春の残響でもある。「高校野球ブラバン応援研究家」として野球応援の研究、取材を続ける梅津有希子さんに、その魅力を聞いた。 取材・文=相原礼以奈 
甲子園球場アルプススタンドにて[写真=梅津有希子氏提供]
始まりは野球と吹奏楽の名門校
梅津さんは中高と吹奏楽に打ち込み、高校時代に「吹奏楽の甲子園」と呼ばれたホール、普門館での全日本吹奏楽コンクール(全国大会)に出場して3年連続金賞を受賞。2013年夏、吹奏楽部女子と高校球児の青春漫画『青空エール』(作・河原和音、集英社)の監修のための取材で甲子園球場を訪れたことをきっかけに、応援演奏の魅力に引き込まれた。以来、関連する取材やウェブ記事の執筆などを続けている。
梅津さんの調べによると、最初に吹奏楽による高校野球の応援を行ったのは、1941年の東邦高(愛知)。しかし、初期の応援演奏に関しては、新聞記事など詳しい記録はほとんど残っていないという。
59年には、天理高(奈良)のオリジナル曲「ファンファーレ」が誕生。安打の際などに現在も広く演奏されている同曲は、大学や高校の独自の応援曲の登場など、応援の在り方に影響を与えていく。
「東邦も天理も、吹奏楽界では昔からの名門。さらに野球の強豪でもあると知り、野球と吹奏楽の応援は切っても切り離せない間柄だったというのがすごく、つながった気がしました」と梅津さん。
その後、各地で多くの個性的な応援曲や応援スタイルが生まれた。その中で、野球応援の定番として根強く定着する曲も出てくる。
定番曲としては、ピンクレディーの「サウスポー」、山本リンダの「狙い撃ち」などの懐メロ、「ルパン三世のテーマ」「海のトリトン」などのアニメソングといった往年の名曲が現在も人気。この理由を、梅津さんは取材に基づいて「球児自身が『あこがれの先輩が打った、この曲がいい』と定番曲をリクエストすることが多いから」と解説する。
定着しやすい曲の特徴は、「昔からの曲にさかのぼっても、やっぱりいい曲は残っている。複雑なメロディーやリズムはお客さんがついて来られないので、シンプルで覚えやすく、声を出しやすい曲が残ると思います」と分析している。
流行=高校生の感性×SNS!?
「一気に盛り上がって定着したのが『アゲアゲホイホイ』。2016年ころから甲子園で広まり始めて、すっかり定番になりましたね」
「アゲアゲホイホイ」は、「サンバ・デ・ジャネイロ」の曲に合わせた掛け声で、ノリのいいサンバの曲調とスタンドが一体となった声の掛け合いで力強さと勢いを生む。しかし・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン