高校通算111本塁打。ドラフトで7球団が競合したスラッガーが7年目の今季、ついに本格覚醒の時を迎えている。7月以降、上昇曲線を描く打撃。みんなが待ち望んだ姿の背番号21がそこにいる。 写真=兼村竜介、BBM 自信に満ちあふれた表情でグラウンドに立っている
生まれた強いスイング
プロ7年目の夏。野球ファンが見たかった
清宮幸太郎がグラウンドにいた。
「タイミングがちゃんと取れているのが大きいのかな」 ずっと苦戦してきた投手との間合いを制し始めた。繰り出す、迷いなきスイング。7球団競合の高いポテンシャルが、はじけるのも必然だった。
きっかけは同僚との打撃談議だ。7月中旬。ロッカーが近い
アリエル・マルティネスとこんな会話をした。
「『なんか打ちにいくときにバットが一緒に付いていっているよね』みたいな話になって、ヒッチではないんですけど、大きくなくていいから、ちょっとだけ後ろに(バットを引く)というイメージで打っていて、それがハマっているかなと」 体重移動を始める体と同時に動き始めていたバットを、少し引くイメージで我慢。いわゆるトップができた。上半身と下半身の“割れ”もできた。ボールを呼び込めるようになり、強いスイングが生まれた。呼び込める“タメ”があるからタイミングも合わせやすい。体と同時にバットも動き出していた以前の打撃フォームでは、タイミングをずらされたら終わりだった。
「今までだと、そのままフーっていっている感じが……。“割れ”っちゃ“割れ”ですけど、どう表現するかはその人次第かなと思うんですけど、ちょっとそういうのができてきているのかな」 それを実感したのが7月15日の
楽天戦(エスコンF)。
「藤平さんからツーベースを打ったときぐらいからですかね」。途中出場で回ってきた8回の打席で
藤平尚真から放った二塁打から、一気に壁を突き破った。前半戦最終戦の7月21日の
ロッテ戦(ZOZOマリン)で2打席連続本塁打を含む4安打3打点。球宴明けも勢いは止まらず、8月10日の
西武戦(エスコンF)からは四番打者に定着した。
数字に出すと、覚醒は顕著に見えてくる。藤平から二塁打を放つ前の31試合は79打数13安打、打率.165、1本塁打、9打点、出塁率.258だった。一方で二塁打以降、9月1日の西武戦(ベルーナ)までの34試合は127打数48安打、打率.378、9本塁打、32打点、出塁率.436。別人となった。いや、この猛打ぶりが2017年のドラフト会議で主役となり、みんなが思い描いていた清宮幸太郎の本来の未来予想図なのだ。
決してほめない指揮官
今季前半戦の苦悩は、これまでのプロ野球人生と同様にケガでつまずいた・・・
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