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THE LAST GAME 最後の勇姿

<引退試合>広島・野村祐輔 『211』は最大の誇り「鳥肌が立つほどの力強い声援は、一生忘れません」

 

シーズン終盤に入り、各チームで行われた引退試合。今年も一人また一人とグラウンドに別れを告げた。秋風が吹き始めた10月。慣れ親しんだ舞台で現役生活に終止符を打った選手のラストゲームを追う。
写真=井沢雄一郎

2024.10.5@マツダ広島

超満員の本拠地・マツダ広島。真っ赤に染まった光景を、あらためて目に焼きつけた


 マウンドで感謝の思いを言葉にする右腕は、気持ちがいいほどにすがすがしかった。それはまるで、ズバッとストライクゾーンに突き刺さる自身の投球のようだった。

 10月5日、野村祐輔は本拠地・マツダ広島で13年間のプロ野球人生を締めくくった。2012年ドラフト1位で入団。同日の試合前に行われた引退会見で「夢だったプロ野球選手になれてプロとしての第一歩を踏めたことがとてもうれしかったことを、今も鮮明に覚えている」と振り返った12年4月1日の中日戦(ナゴヤドーム)でのデビュー戦から、ずっと真っさらなマウンドに上がってきた。211試合連続先発登板は、プロ野球記録として刻まれている。

「先発の魅力は、いっぱいありますね」

 今季の開幕前、右腕がそう教えてくれた。誰も足をつけてないマウンドに上がるときの感覚、1試合にかかる責任の大きさ――そして、何よりも「長いイニングを投げるのが、個人的にも好きですね」。だからこそ、きちんと仕事を果たせるように、「準備をすることがとても大事だと13年間やって一番思った。そこを怠らずにやっていけば、長く野球を続けられると信念を持ってやってきた」。

 この日に向けても入念な準備をして臨んだことだろう。1イニング、打者4人との対戦だったが、ヤクルト丸山和郁村上宗隆からは空振り三振も奪い、「いつもと違う雰囲気の中でマウンドに立たせてもらって初めての感覚で、すごく感動した」と笑顔を見せた。

最後も、もちろん先発のマウンドへ。走者を出しながらも1回を無失点


 試合後のセレモニーで母校の広陵高・中井哲之監督、明大時代の監督・善波達也氏の恩師2人が花束を手に登場した際には目を潤ませていたが、終始、充実感に満ちた表情だった右腕。その姿を、ファンも温かく見守った。

「鳥肌が立つほどの力強い声援は、一生忘れません。大好きなカープのユニフォームを着て野球人生を終えることができて、本当に幸せです」

 最後は、みんながこの日の勝利をつないできた、真っさらではないマウンドに深々と一礼をした。そして、ここからは真っさらな第2の人生が幕を開ける。

マウンドを降りる際、2016〜18年のリーグ3連覇時に選手としてともにチームを支えた新井貴浩監督[写真左]から、ねぎらいの抱擁


PROFILE
のむら・ゆうすけ●1989年6月24日生(35歳)。177cm85kg。右投右打。投手。岡山県出身。広陵高-明大-広島12[1]〜24引=13年。

<成績>
■通算=211試合、80勝64敗0S0H、758奪三振、防御率3.53
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