今年の沢村賞は「該当者なし」と発表された。しかし、投手の分業制が進んだことに伴い完投数やイニング数の「基準」を満たす投手が出にくくなっており、その基準は時代錯誤だという意見もある。沢村賞はこれからどこに行くのだろうか。
文=落合修一[編集部]

戸郷、有原が最終候補も

　プロ野球草創期の名投手・故沢村栄治氏を記念し、シーズンで最も活躍した先発投手を表彰する「沢村栄治賞」の選考委員会が10月28日に東京都内で開かれ、今年は2019年以来の「該当者なし」と決まった。

　5人の選考委員(堀内恒夫、平松政次、山田久志、工藤公康、斎藤雅樹の各氏)による議論では、意見がまとまらなかった。

　選考委員長の堀内氏は「結論から申しますと、今年はたくさんの選手の名前が出てきましたけれども、『帯に短しタスキに長し』で、非常に難しい選考でございました。いろいろな意見が出ましたが、一本化することができませんでした。ですから今年は『該当者なし』にさせていただきます」と話した。

　有力候補としては菅野智之(巨人)、戸郷翔征(同)、伊藤大海(日本ハム)、東克樹(DeNA)、有原航平(ソフトバンク)の5人の名前が挙がり、最終的には4項目をクリアしたセ・リーグ最多奪三振の戸郷、3項目をクリアした有原の両投手が最終候補にまで絞り込まれたというが、最終的に受賞とはならなかった。沢村賞の選考基準は15勝、150奪三振、10完投、防御率2.50、200投球回、25試合登板、勝率6割の7項目とされている。

　堀内氏は「(選考基準は)7項目あるが、(両選手とも満たしているのは)3項目か4項目くらいの成績。投手優位の時代に、残念ですけどもうちょっと成績が上がってほしかったなというのがあります」と不選出の理由を明かした。

　とは言え、投手の分業制が進んだ現代のプロ野球界において、完投数やイニング数などの選考項目のクリアは困難を極めることも事実。堀内氏も・・・